子どもの世界に“善魔”で口を出さない 


絵本の読み聞かせでも多読でも大切なのは、子どもに子どもの頭で理解させること。子どもが聞いてもいないのに、よかれと思って「ここに書いてあるcloudって、どういう意味だと思う?」と横から口出ししないでほしいのです。 

 

教育上、よかれと思ってしたことが悪い結果を招くケースが得てしてあります。これを僕は自戒を込めて“善魔”と呼んでいます。

 

最初から悪気しかないのは悪魔ですが、悪気がない“善魔”の方が本人たちは悪いと自覚しにくいため、それだけやっかい。子どもの英語力を伸ばしたいと善意から「cloudってどういう意味?」と聞きたくなるのでしょうが、それでは絵本で英語の世界に没頭していた子どもを現実世界に引き戻してしまいます。

「cloudは雲という意味なのよ。主人公は雲の上を飛んでいるのよ」などと大人が日本語で説明するのは、余計な押しつけでしかありません。子ども自身が気にせず読んでいるのなら、邪魔せずその世界に浸らせてあげるのがベストです。逆に子どもが「cloudってどういう意味?」と自分で聞いてきたら、「そんなの知らなくていいのよ」と拒絶せずに、「何のことだと思う?」と尋ねてください。「雲」という意味だと知らないままで子どもが読み終わってもそれでOK。子どもが頭のなかで、英語で理解していればいいのです。それができるのが絵本のビジュアルの力です。 

頑張って自力で読み終わったら、「どんなお話だったの? お母さんに教えてみて」と声をかけてあげてください。子どもが喜んで内容を語ってくれたら、細かい間違いを指摘したりしないで、「それは面白そうね。じゃあ、ママも今度読んでみるね」と答えてあげましょう。