数あるオンラインストアとは一線を画す、『北欧、暮らしの道具店』をご存知でしょうか。北欧雑貨のセレクトからスタートし、オリジナルブランドやアパレルの取り扱いにも幅を広げる一方で、オリジナル制作のドラマやラジオを公開するなど、オンラインストアの枠にとどまらず、ECメディアとして常に新しい発信を続けています。独自のセンス溢れる商品ラインナップに、ファンも多数!そんな『北欧、暮らしの道具店』の店長で、創業者でもある佐藤友子さんに、ブレない世界観と心躍るセレクトの流儀、またこの春発売されたオリジナルコスメの開発秘話についてうかがいました。

撮影/滝沢育絵

佐藤友子さん(以下、佐藤):「2006年に、元々大好きだった北欧へ旅行に行ったのですが、そこで出会った北欧の人たちの”暮らし”を等身大に楽しんでいる様子がとても豊かに見えて衝撃を受けたんです。そこで、雑貨を通して北欧の人たちの暮らしや価値観をシェアしていきたい、という想いからオンラインショップをオープンし、今年で14年目になります。北欧のヴィンテージ雑貨のセレクトからコツコツとスタートし、北欧以外の国や日本のものも含め徐々に取扱い商品を増やしていきました。その後オリジナルブランドや、アパレル商品の展開も始めました」

 


少しの理想は必要だけど、手の届く幸せもまた心地いい


佐藤:「創業当時から掲げてきたコンセプトが『フィットする暮らし、つくろう』というものなんですが、これは――他の誰かのものさしでなく、自分のものさしで満足できる暮らしっていいよね――そんな価値観に根ざしたものなんです。誰しも理想の暮らしがあると思うのですが、手に届かなそうなものを追い求めるのは、ちょっと心が苦しいですよね。もちろんこんな暮らしが理想、というものはちゃんとあるけれど、理想を追うばかりじゃなくて、自分というものをより深く知って、”自分にちょうど良い心地よさ”に気づく、という感覚です。『自分にフィットするもので事足りる、それもまた幸せだよね』、私たち自身が北欧で感じた、そんな価値観をお客さまと共有したいという思いが根底にあります」

ターゲットは“私たちみたいな誰か” 


佐藤:「お客さまは年齢や職業などでの線引きはなく、近い価値観を持った“私たちみたいな誰か”。だから新商品の企画を考える時も『自分はお客さまのひとりである』という定義のもと進めていきます。売れそうなものを考えるという視点ももちろんビジネスには必要だと思うのですが、それ以上に自分たちが本質的に感じる”必要”に気づいてプロダクトに反映していく、というプロセスを重視しています。でも実はこれが結構苦しいんです。お客さまにどういうものが売れるんだろう、という外向きのリサーチをするのではなく、雑貨でもアパレルでも、まず自分に向き合って、コンプレックスや、やましい気もちも言語化していきます。そこでさらにその思いを仲間のなかでオープンにさらしていきます。恥ずかしい気持ちになるシーンもあるし、もちろんそれをする勇敢さも求められる。仲間でないとできない作業ですね。会議中、こんなにみんなが自分の話をしているのは、他の会社にはない特徴かもしれません(笑)」

「雑貨はプライベートブランドの開発グループとデザイングループが協業して企画・開発しますが、私がテーマや企画を投げることも多いです。また、私個人のインスタやメルマガからお客さまの声を拾うことも。お客さまがSNSで買ったものの感想をアップしてくれているものも、隅々までチェックするようにしています」

インスタでの投稿をきっかけにうまれたヒット商品

佐藤:「以前私のインスタで、メイク道具をカゴにゴチャッと入れてダイニングに置いている写真を投稿したところ、ものすごく反響があったんです。“私もかごに入れてます”、“理想的なデザインのメイクボックスに出会えていなんです”といったコメントが驚くほど沢山届いて。リビングやダイニングの一角でお化粧しているのは私だけじゃないんだ、意外と同じような人が多いんだと気付いて。だったら、カゴよりも見た目が良くて、ちゃんと仕切りもあって、メイクをする場所まで持ち運べる取っ手が付いていて…そんなメイクボックスが作れたらインテリアの一部として抵抗なく置けるのでは、と考えて商品化しました。これは入荷するたびに売り切れてしまう、ヒット商品になりました」