ヘアライターさとゆみ(佐藤友美)の新連載。ニュースな女性たちのヘア&メイクをチェックするコラムです。前回に引き続き、話題の「東京ラブストーリー」をレビューします。
平成版と令和版、2つのドラマは何が違った?(ネタバレあり)
東京には、完治がひそかに高校時代から思いを寄せていた同級生の関口さとみ(石井杏奈/有森也実)と、親友でプレイボーイの三上健一(清原翔/江口洋介)が住んでいた。
完治の心は、リカとさとみの間で揺れ動き……。
ヘアライターのさとゆみです。
前回の記事にたくさんの反響ありがとうございました。ハイジな女子たちは、クララに煮え湯を飲まされてきたんだなーというのがわかり、勝手に戦友を見つけた気分でおります。
ところで、この間、知り合いがこんなことを言っていたんですよ。
「令和の『東京ラブストーリー』は、何から何まで改悪だった。本家を超えられないんだから、そのままやってくれればいいのに」
って。
彼女曰く、「令和版のリカは、ただの気まぐれで自由な女にしか見えなかった」って。
でね、私、「あれ? そうだったっけ」って思ったわけです。そんなに、昔のリカの方がよかったっけ? って。
で、全話見直しました。29年前の平成版。
そして、思った。
これ、やべーやつだ……。
って。
鈴木保奈美さんが演じた、平成版の赤名リカ。
保奈美さんが可愛すぎるし愛くるしすぎるから、うっかり気付くのが遅れるけれど、冷静に考えると、この子、絶対やばい。
「カンチが好き」
「やっぱり嫌い」
「今日は絶対会いたい」
「やっぱり会いたくない」
「さとみちゃんに会って、なぐさめてあげなよ」
「カンチは私よりさとみちゃんが大事なんでしょ」
……etc.etc.
私がカンチだったとしたら、「どないすれっちゅーねん」というくらい、朝令暮改のオンパレード。もし私の友達がリカと付き合っていたら、全力で止める。そういう危ないやつだった。
で、気づくわけです。そっか、このドラマ、恋愛依存と見捨てられ不安を描いた話だったんだな、って。
まだメンヘラという言葉すら存在しなかった時代に、恋愛に依存しちゃうメンヘラ女子の心模様を、はじめてここまではっきり描いたのが「東京ラブストーリー(平成版)」だったのかもしれない。
だからものすごく新鮮だったし、私たちは、あそこまでリカに感情移入して、一緒に振り回されて、ドキドキしたんじゃないかな。そう思ったなー。
一方で、石橋静河さん演じる令和版のリカは、がっつり自立している。恋愛エネルギーは強すぎて重いけれど、ちゃんと自分の足で立っている。
「東京ラブストーリー」は、29年の歳月を経て、「依存」の話から「自立」の話に変わったんじゃないかな。そんなことを思ったよ。
平成版リカと令和版リカ。ここが違う
(平成版リカ)女子力で可愛がられて仕事をとる
(令和版リカ)企画力で認められて仕事をとる
(平成版リカ)24時間、私だけを愛して。私だけを見て。
(令和版リカ)私をしばらないで。私を自由にさせて。
(平成版リカ)海外赴任の辞令を恋愛の駆け引きに使う
(令和版リカ)カンチに相談せず海外で働くことにする
(平成版リカ)カンチに焼きもちを焼かせようとする
(令和版リカ)カンチに黙って子どもを産もうとする
そんなリカに対して、どちらのカンチも振り回されるのだけれど、平成版カンチ(織田裕二さん)が、主にリカの愛情の重さとメンヘラ具合に悩まされるのに対して、令和版カンチ(伊藤健太郎さん)は「仕事もプライベートも、自分よりもステータスが上のリカ」の存在感に悩む。
そんなあたりも、時代の流れを感じたなあ。
令和版のカンチがリカを捨てるのは、リカの愛が重くなったからじゃなくて、カンチ自身も自立するから、なんだよね。
東京で仕事の成功を重ねることで、男としての自信をたくわえ、「東京」の象徴であるリカからも自立する(=リカを必要としなくなる)んだろうな。
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