スーパーやコンビニのレジ袋が有料化されたことをきっかけに、店内にあるカゴを持ったまま店を出る「カゴパク」が増えているそうです。にわかには信じられませんが、なぜ、このようなことが起こってしまうのでしょうか。

 

カゴパクとは、客が精算した商品をカゴに入れたまま持ち帰ってしまうことを指します。レジ袋がタダでもらえないので、カゴをレジ袋がわりにしていると思われます。7月からレジ袋の有料化が行われており、レジ袋をもらうと3〜5円程度のお金が取られるようになりました。

毎日のことですから、3〜5円といってもバカにはできませんが、レジ袋にお金を払いたくなければ、マイバッグを買えば済む話です。マイバッグを忘れたのであれば、1回だけ3円払えば済みます。このわずかなお金のために、あの大きなカゴを丸ごと勝手に持ち帰るというのは、常識では到底、理解できません。

もちろん、こうした行為に及ぶ人は少数だと思いますが、都内のあるスーパーでは1カ月で20件のカゴパクが発生したそうですから、ごくわずかとは言い難い数字です。こうした状況から、スーパー側では、清算前と清算後でカゴを色分けしたり、精算済みのカゴの取っ手を外すなど、涙ぐましい努力をしています。

こんなことのために、店側が労力を使い、貴重な時間をムダにしなければならないというのは、本当に嘆かわしいことですが、これが日本社会の現実です(日本の生産性が先進国中、最下位なのも納得です)。

筆者が極めて大きな問題だと考えるのは、カゴパクをする人のほとんどに罪の意識がないことです。罪の意識がないというのは、場合によっては意図的に犯罪行為に及ぶ人よりもタチが悪いものです。

犯罪者を擁護するつもりはまったくありませんが、明確に罪を犯すつもりで犯罪行為を行っている人は、自分の行動について100%理解しています。捕まれば仕方が無かったと考えるなど、合理的に判断しますから、何らかのきっかけで、犯罪をやめる可能性もあります。

しかし、自分の取った行動について罪の意識がない場合、こうした人たちを正しい行動に修正させるのは容易なことではありません。無意識的にカゴパクをする人は、仮にカゴパクについて対策が取られ、実行が難しくなれば、また別のところで無意識的な窃盗を繰り返す可能性が濃厚だからです。

明確な統計はありませんが、諸外国と比較して、日本人は無意識的な犯罪に手を染める割合が高いとも言われています。日本で治安がよいと言われているのは殺人など特定の犯罪に限った話であり、窃盗や性犯罪はかなりの頻度で発生しているのが現実です。窃盗を万引きに、性犯罪を痴漢と軽い言葉に言い換えていることからも、発生頻度の高さや、そもそも犯罪であるという認識が欠落していることが伺えます。
窃盗がその代表ですが、無意識的な犯罪に手を染める理由のひとつとして考えられているのが、所有権に関する曖昧な認識です。

 
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