これからの時代、夢は“何となく”持つことが大事

 

もう一つ、一歩を踏み出すうえで大事なことをボークさんは教えてくれました。それは「目標を具体的に絞り込まない」ということ。

「これまではキャリアを目指すとき、『この職業に就きたい』と1点を見つめて駆け上がるアンカー型が一般的でした。
たとえば『税理士になりたい』と定めて、そのためには何をすればいいかを逆算で導き出すのが、一番やりやすく、最短で実現できるキャリア設計法です。

 

だけどこの方法は、女性の場合あまり現実的ではありません。というのも女性は結婚、妊娠出産など、様々なライフステージがあるから。私の場合はつわりがなかったのですが、つわりがひどい人はその期間、休む必要も出てくる。
そうするとどうなるかというと、逆算して設計した目的達成プログラムが機能しなくなってしまうんです。多くは3年、5年と長期スパンで設計するでしょうから、簡単にはプログラムの組み換えができない。結果、とん挫してしまったという人も少なくないのです」

さらに、この一点を見つめて駆け上がるキャリア構築法にはとても“もったいないこと”がある、とボークさんは言います。

「どういうことか説明する前に、皆さんに実際に体感してもらましょう。

では皆さん、今から10秒間、自分の身の回りにある黄色いものを数えてください。1,2,3……。はい、10秒経ちました。
ではお尋ねします。
黄色いものではなく青いものはいくつありましたでしょうか?
……もうお分かりいただけたと思います(笑)。そう、青いものはたくさんあるはずです。
でも黄色いものという一点しか見つめていないと、他のものは何も目に入ってこないんですね。キャリアも同様。『税理士になるうえで関係ないから』と他に目を向けないでいると、もしかしたら素晴らしいきっかけやつながりかもしれないことも見逃してしまう。自分の可能性に蓋をしてしまうんですよ」

ではこれからの時代、どのようなキャリア構築法が正解なのでしょうか? ボークさんは、“何となく、大きな方向性だけ定める”という方法をオススメしています。

「たとえば建築家になりたいという場合、もっと大きく、『建物に関わる仕事をしたいな』という何となくの目標に広げてみるんです。そうすると今度はインテリアデザインとか、もしかしたらソーラーパネルを作る会社とか、ものすごく幅広い方向へアンテナが向かうようになります。

建築家という仕事は選択肢の一つでしかなくなり、可能性が広がるし、時代の変化にも敏感になれる。これからはそうやって、時間をかけて自分が本当に働きたい形でのキャリア形成をしていく時代だと思うんです。
これなら女性としての人生もフルに楽しみながらキャリア構築できる。ムダかなと思うようなことが実はすごく役立ってきたりするので、どんどん脇にそれたりよそ見してほしいと思います」

 

<書籍紹介>
『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』

ボーク重子著 文藝春秋 ¥1400

全米最優秀女子高生の娘を育てた母親として知られるボーク重子さん。専業主婦時代に「子育て後の自分には何が残るんだろう?」と不安を感じ、経済的自立を目指すべく動き始めました。その経験とライフコーチとしての知識をもとに、自分で自分の幸せを作る30の方法をまとめた一冊を上梓。人生100年時代、子育て後の長い人生を後悔しながら生きないためにも、是非読んでもらいたい一冊です!

取材・文/山本奈緒子
構成/片岡千晶(編集部)
 
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