2. マンモグラフィとエコー、どちらかだけじゃダメ?
→ダメ。どちらかだけでは検査として不十分です。


即答しますが、ダメです。マンモグラフィとエコーは、例えるなら「手と足」のようなもの。それぞれに得意・不得意があるので、どちらか片方だけの検査では不十分なのです。

マンモグラフィはごく少量のX線被曝はしますが、経年的なチェックをするのに向いていますし、乳腺にカルシウムが沈着する「石灰化」を見つけるのも得意です。一方のエコーは、マンモグラフィでは識別できない、乳腺と腫瘍の重なりを見つけるのが得意です。ですから、医師の立場からすると「どちらかだけで十分ですよ」というわけにはいかないのです。会社の健康診断・または自治体のがん検診ではマンモグラフィだけという方もいるかもしれませんが、ぜひセットで受けていただきたいところです。

 


乳房を専用機で挟んで検査するマンモグラフィは、どうしても「痛い」というイメージがあるかもしれませんが、今の機材は以前のものに比べて、痛みが軽減されているものもあります。過去に痛い経験をしてマンモグラフィを敬遠しているという方は、一度病院で相談してみるといいと思います。

とにかく乳腺専門医として言えることは、乳がん検査にはマンモグラフィ+エコーがベストだということです。なお、豊胸しているという方は、伝えづらいかもしれませんが、検査前に必ず医師や検査技師に伝えるようにしてくださいね。

 


3. 検査にはどのくらいの時間がかかる?
→一概に言えませんが、大きい病院ほど待ち時間が長くなる傾向が。


病院の規模や検査する内容によって大きく異なるので、一概には言えません。
健康診断や人間ドックは流れ作業ですから、短時間で終わる場合もありますが、乳腺科・乳腺外科では一人ひとりの患者さんに対して時間をかけて問診を行ったり、治療方針を説明することが多いので、待ち時間が長くなることもあります。

例えば「○○がんセンター」などの名前がついているようながん専門病院は、かなり大きな規模の病院であることが多く、半径数百キロを診療圏内としていることもあります。すると遠方からたくさんの方が診察に訪れるので、検査までの待ち時間も長くなる可能性があります。同じように、さまざまな診療科を抱える大学病院など、は2ヵ月先まで予約がいっぱい、なんてところも珍しくありません。

乳がん検査は、はじめから大きな病院に行かなくとも、マンモグラフィとエコーの検査を行っている当院のような小さな病院で十分です。「最初から大きな病院で診てもらった方が、万が一の時も安心なのでは?」などと思われるかもしれませんが、検査でもし乳がんが見つかった場合には、医療連携している大きな病院を紹介してくれるはずなので、安心してください。

病院選びという点では医師との相性の問題もありますが、こればっかりは実際に診察を受けてみないとわからないところです。ただ、腕利きの先生の周りにはいい先生が集まる傾向にあるので、「この先生だ!」と思う先生がいたらその手を離さないようにするのも、乳がん治療のポイントかもしれませんね。
 

緒方晴樹 Haruki Ogata

目白乳腺クリニック院長。日本乳癌学会乳腺専門医・指導医。20年以上にわたり乳腺外科を専門とする。東京逓信病院では乳腺センター立ち上げに尽力、センター長として多くの乳がん患者の治療にあたった。2019年2月、女性が気軽に受診できる「乳がん検診・治療・フォローアップ専門クリニック」として、目白乳腺クリニックを開院。


取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵

 

【全10回】
第1回「胸がチクチク、コロコロ...育児・働き世代を襲う乳がんの基礎知識」>>
第2回「おっぱいチクチクは乳がん?乳腺症?乳腺専門医が教える乳がんセルフチェック法」>>

 
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