30周年を迎えるWOWOWがその開局を記念して山崎豊子原作の『連続ドラマW 華麗なる一族』を放映します。大阪万博を間近に控えた高度経済成長期に、富と権力を獲得する手段として関西の政財界で閨閥を張り巡らす阪神銀行の頭取・万俵大介を中心に、一族の繁栄と崩壊を描いた作品です。

 

内田有紀さんが演じるのは中井貴一さん演じる万俵大介の愛人・高須相子。愛人でありながら、同時に大介の子どもたちの家庭教師でもあり、万俵家に同居しているという不思議な間柄。妻の寧子(麻生祐未)を差し置いて、家庭内を差配し、大介の右腕となり万俵家の閨閥づくりを推し進める姿はこの小説が世に出た当時も大きな話題となりました。物語の核をなすファム・ファタールを、内田さんはどう演じたのか。彼女が考える高須相子像やその役作り、さらに内田さんご自身の女優としての在り方などについて、お話を伺いました。

 


自宅でもヒールとタイトな服で
相子の身のこなしを刷り込ませた


内田有紀さん(以下、内田):今まで、錚々たる女優さん方が演じてこられた『高須相子』を私に?と、最初は少し戸惑いに襲われるような感じでした。ただ、元々原作もドラマも映画も拝見していましたので、とても光栄に思ったのも確かです。プレッシャーよりも頑張ろう!という気持ちが最終的に私の心を満たしていきました。

「連続ドラマW 華麗なる一族」より

内田さんがおっしゃった“錚々たる女優さん”というのは、京マチ子さん、小川真由美さん、鈴木京香さんといった方々。内田さんがこだわったという役作りのプロセスについて伺いました。

内田:まずは西浦監督と声のトーンや仕草、目付きなどについて細かく丁寧に相子の特徴を作っていきました。15年来の愛人であり、万俵家は勝手知ったる我が家のようなもの、自分の居場所を確保するためには人を人とも思わずに生きていく女性なので、自分の中に常に“自信”を持っていないと万俵家の人々とエネルギー高く向き合えないという実感はありましたので、そのあたりを突き詰めていった感じです。

細かいディテールについても、内田さんの役作りに対する姿勢が光ります。

内田:私の目は少し丸いほうなのでそれを切れ長に描きつつ、どこを見ているのか分からないような、けれどもすごく強い眼差しという感じを意識しました。あとは声のトーンに、柔軟な幅を作るよう意識しました。例えば、万俵家の二子や三子とは、家庭教師をやっていた優しかったころの相子の柔らかいイメージで話すようにしたりなど……。言っていることは結構厳しい台詞なのですが、そこで女性としてのしなやかさが見えてないと、大介(中井貴一)にも「美しい」「愛おしい」と思ってもらえない、ただの怖い人になってしまうのではないかと。そういった部分では和やかさを纏った芝居になるよう努めました。

万俵家のセットが出来上がったときに、内田さんは“セットウォーク”と呼ばれる、いわば事前の内見のようなものをさせてもらったのだそう。

「連続ドラマW 華麗なる一族」より

内田:撮影に入る前にダイニングやリビング、寝室など隅々まで研究しました。相子は普段どのような動線で動いているのかを監督と細かく相談させていただいたんです。普通のドラマでは朝現場に入って、そこで確認するくらいしかできませんから、準備に時間をかけられたのは本当に贅沢だったと思います。セットの写真を撮り、ビデオを回して、何度も家の中でシミュレーションを行いました。自宅でもヒールのあるスリッパを履いたり、なるべく身体にフィットする洋服ですごしたりすることで、時間をかけて自分に“相子”を染み込ませる作業を続けました。セリフ回しも少しクラシカルで丁寧ですし、家庭教師だったというバックグラウンドから身のこなしや喋り方にも上品さが必要なうえ、それでいて締めるところは締めるピリッとした怖さも必要ですし……。撮影現場に入ってすぐそんな空気をお芝居で出せればいいんですけど、やはりなかなか難しいです。そうなれるように女優としてもっともっと経験を重ねたいと思ってます。


万俵家の非日常の世界を
心ゆくまで楽しんで


高須相子という人間は、そもそもは子どもたちの家庭教師という立場にありましたが、大介の愛人となり、万俵家を大きくするため閨閥づくりを行い、家庭内までをも差配するという、ある意味珍しい立場の女性。“相子”という女性像を、演じるうえでどのように捉えられていたのでしょうか?

「連続ドラマW 華麗なる一族」より

内田:これは山崎豊子さんの原作の時代と設定のすべてにヒントと答えがあります。現代ではない、いわば“時空の歪み”みたいなものを楽しんでもらえるかと思うので、私たちも非日常をどれだけ皆さまに見せていけるかというところに重きを置いて芝居をしました。「こんなシチュエーションはないよね」と言ってしまうのではなく、あの時代にあんなふうに過ごした家族が確実にいて、その生き様を見ていただくという心づもりなんです。万俵家の子どもたちからすると相子は目の上のたんこぶですし、彼らが大人になって事情が分かれば、必要のない存在であることが明確になってしまうという、その中で必死に頑張っていたんだと思うんです。閨閥を形成するということは、子どもたちが巣立ってしまえば自分の居場所は必然的になくなるわけです。そこで大介からの“愛”を失わないために、相子は懸命に生きたのではないでしょうか。ある意味、“ビジネスウーマンのはしり”だったのではとも思います。自分を艶っぽく磨くのもお勤め、凛とさせて万俵家を差配していくのもお勤め……。見る人からすれば悪女的に感じるかもしれませんが、そこは物語、映像の妙として楽しんでいただけたら嬉しいです。

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妖艶な愛人役・新境地に挑む内田有紀さん
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