昨年11月、世間をにぎわせた壇蜜さんの電撃結婚。お相手は代表作に『東京都北区赤羽』がある、不条理ギャグの名手で、漫画家の清野とおるさんと聞いて、「両人とも笑いの知的センスが高次元。お似合いすぎる!」と納得した方も多いのではないでしょうか。あえて聞いてみたい、すべてにおいて順風満帆に見える壇蜜さんが、いま、結婚を選んだ理由を。

*こちらは「2020年人気インタビュー20選」です。元記事は2020年3月2日に配信しました。

【壇蜜さん】男性にも女性にも絶賛された結婚相手選び「少しだけわがままを」_img0
「ともに譲れないものがあってぶつかることはあります。そのときは私から譲歩することが多いですね」と、新生活について語る壇蜜さん。ワンピース/Room211
 


派手な喧嘩はないけれど
お互い譲れないことはある


「変わらないままの私でいるためには、少しずつ変化することが必要だ…と感じたからなんです。たとえば、長く愛される名店は、B級でも老舗でも同じ味を守り続けているようでいて、実はごくわずかなレベルですが、調味料や素材を変化させているといいますよね。リカちゃん人形も、あのロゴマークと話し声は昔のままだけど、初代と比べるとびっくりするくらい(笑)顔が違う。同じように壇蜜という芸名には変わりがないけど、結婚したことで生活が変化して、ほんの少しだけ私の中身にも新しい何かが加わっていく。表面的には”何も変わらない”状態を演出しながら自分を変えたい、そのためにこの結婚の話にノッたという感じですね」

結婚相手に選んだ相手によって、世間は本人のイメージを崩壊させたり、がっかりしたりと身勝手なもの。それが壇蜜さんの場合は、確かにユニークなお相手ではあるけれど、彼女の知性や色気、世の中を見通したようなコメント力、毒っけ……すべてにおいてわずかな曇りも与えなかったように見えます。

昨年、出演した番組では「(清野氏は)警戒心の強い方。メールアドレスを渡そうと思ったら逃げられたので、じわじわ距離を詰めていきました。なかなか捕まえるの大変でした」と語っていた彼女。でも、きっといざお付き合いが始まったらトントン拍子だったのではという想像をしてしまいます。清野氏のツィッターで「こんなマイナーカルト漫画家と、壇蜜さんが北区役所で入籍とか意味が分からないですよね…僕も全く意味が分かりません。3年前くらいに結婚は完全に諦めたのでラッキーでした」と喜びと可笑しみがにじみ出ているツィート。自分軸の人生をバテずに進む、こだわりの強い同世代のクリエイター同士、『こんなお似合いのカップルが!』とツィッターでもバズっていました。

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新生活で経験する何気ないエピソードから、新境地を開く物語が誕生するかもしれない。壇蜜さん、清野さんともにこれからの新作が楽しみ。



週の半分を別々に暮らすから
結婚に踏み切ることができた
 

突然のふたり暮らし、窮屈に感じたり、「ああ、ひとりになりたい!」と思うことはないのでしょうか?

「早いうちから結婚できたらいいねという話はしていたけど、彼が暮らす赤羽に私が引っ越して一緒に生活するのは、たぶん無理な気がしていました。原稿を書くときは集中力が必要で、ひとりじゃないとダメだし、自分だけで過ごす気ままな時間も手放せません。彼にしても、ネームは一緒の時間でもOKみたいですが、ペン入れは一人の集中力が必要な様子。彼のほうから別居婚にしようと言ってくれて、結婚に踏み切ることができました。いまは、作業場兼オフィスを赤羽に持ち、週の半分はそこで一緒に暮らすという形で落ち着いています。『ふたりでずっと一緒にいて幸せ』なんて、お城に住んでいる人の言葉ですよね(笑)。狭い家でもふたりで楽しく暮らすには、私たちは長く生き過ぎているし、情報も多すぎます。結婚のために、少しだけわがままを言わせてもらいました」

母親はすごく明るい照明が好き、
彼はダウンライトが好き(笑)


それぞれ自分のペースで暮らしてきた男女が多くの時間をともに過ごすようになれば、喧嘩や思いがけない出来事が次々と起こるもの。いつも冷静な壇蜜さんですが、大声を出すようなことがあるのでしょうか。

「小さな衝突はあっても、派手な喧嘩はまずしませんね。それより、これはおもしろいなあという出来事はよく起ります。最近では私の母と清野さん、ふたりが灯りに求めるものが全然違うことがわかってきて。母は蛍光灯が大好きで、照明のスイッチを全開にするので家中が煌々と明るくなります。すべてのものが白っぽくなって、飼っているヘビがまるで作り物のように見えたり……(笑)。一方の清野さんはオレンジ系のぼんやりとした明りのダウンライトが好きで、家の中がムーディ―な居酒屋のようになるんです。これくらいの温度が好きなんだなとか、大好きな人についてのささいなことを発見するのも、一緒に暮らすことの楽しさなんですね」

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壇蜜 1980年生まれ。昭和女子大学卒業後、調理師免許を取得、また冠婚葬祭の専門学校にも通う。和菓子工場、銀座のクラブ、大学病院など様々な職場を経験した後、2010年に29歳のグラビアアイドルとしてデビュー。女優として多数のテレビや映画に出演、2013年、映画『甘い鞭』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。執筆活動からコメンテーターまで幅広く活躍中。著書に『たべたいの』『壇蜜ダイアリー』『死とエロスの旅』、初の小説『はんぶんのユウジと』も大好評! 2019年、漫画家の清野とおる氏と結婚。クリエイター同士、「お互い変えない」ことにチャレンジする結婚としても注目を集めている。

撮影/神戸健太郎
ヘア&メイク/妻鹿亜耶子
スタイリング/奥田ひろ子
文/浦上康栄
構成/藤本容子

 

 

第一回「【壇蜜さん】「”今さら”と思ってからが女性の人生は面白いはず」」はちら>>