学生時代に、リセエンヌ(フランスの公立学校のリセの女学生)ブームが到来し、その後に雑貨ブームが到来。見事に、そのトレンドに躍らされていた編集部・大森です。

思春期に憧れの聖地だったのが「F.O.B COOP 広尾店」。オーナーの益永さんの審美眼が冴えまくる店内で、パリジェンヌになった気分(苦笑)で何時間もうっとりと商品を眺めていましたっけ。

ショップに併設されたカフェの窓から外苑西通りに行き交う人を眺めたり、読書したり……。

F.O.Bは「本船積渡価格」、COOPは「協同体」の意味。本当に良いモノを適正なプライスで提供するというのがコンセプトだけあり、センスが良い雑貨(私が学生当時は本当にそんなお店はなかなかなかった!)を、お小遣いやアルバイトで貯めたお金(=学生でも買える価格)で購入することができた貴重なお店でした。

最初に足を運んだのは高校生のとき。もちろん、それは携帯でグーグルマップが見られない時代。北関東の山奥から電車を乗り継ぎ、乗り継ぎ……現在地がわからなくなりながらも、人に道を聞きまくり、必死の思いでお店の前にたどり着いたことが昨日のことのようです。まさに、私にとっての天竺(大袈裟)! 階段を数段のぼり初めてドアを開けるときの緊張と、開けたときの感動は今でも鮮明に思い出せるくらいです。

そして、なんといってもコチラのお店に足を運ぶ醍醐味はオーナーの益永さんにお会いできること。その所作や佇まいをウットリと眺めながら、お茶をするのが好きでした。それは、あたかも「男子学生が学校一のマドンナを校舎の陰からジトッと覗き見しているかのよう」だったと思います。そんな私の視線に気づくと気さくに話かけてくれ、それだけでホクホク気分で家路につくことができました。益永さんは、私に“スタイル”という言葉の意味を初めて体感させてくれた女性だったのかもしれません。

「最近は似たような店もたくさんできた。簡単に『もの』が手に入るようになったし豊かな国になったはずだけど、ちょっとおかしい。疲れてしまった」。震災後、自身の考え方も世の中の流れも変わり、「背負っていたものを軽くしたくなった(六本木経済新聞より)」と、益永さん。(写真:Facebookより)

その広尾店が、本日25日20時に閉店します。

 


最後に益永さんにお会いしたく、数日前、足を運んでまいりました。

何度、足を運んだか分からないカフェ。
最後は、大好きだったフレンチトーストを。

私の「また、どこかでお会いできますよね?」というおセンチな言葉に、「何か始めたくなったらやるから、それまで待ってて」とサラリと微笑む益永さん。「待ってます! 私、待っています!」と、思春期の男子学生のようなテンションで初恋の相手に熱い思いを最後にぶつけてまいりました。

人なつこい益永さんの愛犬「ミラクル」との2ショット。

国立競技場(取り壊し着工開始は2014年)、ホテルオークラに続き、2015 年は、私の思い出深きスポットがどんどんなくなっていくような――秋は、なんだか必要以上にセンチメンタルになってしまって、よくありませんね(笑)。