愛されている実感を持てないのは、他人と比べるから

母と息子のすれ違いを、クスリと笑える掛け合いと、突き刺すような心理描写で描いた本作。その関係性が見どころになると語ります。

「お母さんからすれば、息子のことを嫌いになるわけがない。だけど、息子自身は愛されている実感が持てない。どうしてそうなったかと言うと、きっと周りと比べるからなんですよね。よその親子を見て、なんでうちはって勝手に悲観して、お母さんへの不満をどんどん膨らませてしまった。そうしてお母さんのことを遠ざけているうちに、8年もの時間が過ぎた母と息子のお話なんです」

 

かつて私たちの周りには「親を大切にできない人は、人間として何かが欠けている」という言説がまるで正論のようにまかり通っていました。けれど、親子だからと言って必ずしも通じ合えるとは限りません。たった1人の親だけど、どう接していいかわからない。そんな悩みを抱えた人はこの社会にたくさんいます。

「僕が演じるリアルは、自分で自分のことを『息子』だと口にするのもためらってしまうような状態だと思うんですね。もしお母さんから『あなたのことを息子だなんて思っていないから』と否定されたら、自分の存在意義さえなくなってしまう。それが怖くて『息子』だと言えない。そんな息子と母の距離感がどう変化していくのかに注目してもらえたら」