モデルとして、ファッションブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブ・ディレクターとして、多才に活躍する桐島かれんさん。ステイホームの毎日でも、ファッショナブルで洗練された暮らしは、ミモレ世代の憧れです。かれんさんに、装うことや日々の暮らしについてお聞きしました。

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シャツ¥30800、パンツ¥37400/ハウス オブ ロータス 


自分の感性で選んだ“好きなもの”がセンスを作る


――なかなか自由に外に出ることができない毎日ですが、かれんさんがインスタやブログ、YouTubeなどで発信されているご自宅での時間は、とても充実していて素敵です。

もともと、家にいることが大好きなので、ステイホームを満喫しています。観葉植物を育てたり、子犬を飼い始めたり、家庭菜園を始めたり、今だからこそできることを始めました。夢中になりやすい性格なので、お天気がいい日は麦わら帽子を被って植物に水やりをしたり、毎日忙しいです。

――ずっと家にいると、オシャレに対する意欲が少なくなるように感じます。リラックスしすぎないようにするコツはありますか?

私も自宅にいるときは、とにかく汚れてもいい、楽な服で動き回っていますが、ときには、きれいな色の服を取り入れると気持ちが変わります。若いときのファッションから比べると、最近、ますますビビッドな色の服が好きになってきました。ずっと黒、紺、グレーというベーシックカラーが好きでしたが、50歳を過ぎたころから、気持ちが華やぐ、鮮やかなビタミンカラーの色の服をよく着るようになりましたね。ピンク、赤、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー。クローゼットの中は、色別に服を並べていて、たくさんの色があるのを見るだけでハッピーな気持ちになります。

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ニット¥52800、スカート¥44000/ハウス オブ ロータス

――必要なものと必要じゃないもの、好きなものと好きじゃないもの、かれんさんのおしゃれの基準とは?

若いときから、ブランドのロゴが大きく入った服など「記号化」されたものが好きではありません。天邪鬼的な反発もあったのかもしれませんが、みんなと同じものを着ると安心、という感覚が好きではなくて。また、母親だから、妻だから、こういうファッションでなければならない、というのもナンセンスだと思ってきました。だからといって、突飛なファッションで目立ちたいというわけではなくて、自分の感性で選んだ好きなものを身にまとうことで、スタイルを築いてきた感じです。

若いときからたくさん世界を旅してきましたし、ファッションデザイナーになりたくて、コレクションの写真や雑誌もたくさん見ました。ファッションが好きで、アートが好きで、音楽が好き。貪るように世界中のいろいろなものに触れ、取捨選択してきたことで、好きなものの軸が定まってきました。結局、何を選んで、何を捨ててきたかの積み重ねが、その人のセンスになっていくのではないかと思います。

 


おしゃれに迷いの出た40代


――スタイルを築きながらも、年齢を重ねると、おしゃれも変化していくのではないでしょうか?

好きなものを自由に選べていたはずが、40代のころって、おしゃれ難民になるんですよね。体型の変化があって、何を着ていいのかわからなくなります。「欲しいものがない」「買いたいものがない」という状況になって。30代に似合っていたものが似合わなくという現象が、女性にはあると思うのです。そのときに、これまでの好みにしがみつくのではなく、本当に何が似合うのかをアップデートしてみるのがおすすめです。

たとえ、頑張ってダイエットをして、元の体型に戻ったり、痩せたりしても、やはり重力には勝てません。若い頃とは違うので、似合わなくなる服も出てきます。似合わないと気づいたら潔く断捨離を。でも、20代のころに初めて行ったパリの蚤の市で買ったブラウスや、中国で買った手の込んだ刺繍のカーディガンなど、どれほど年月が経っても、好きなものはやはり好きで、ずっと手放さずに残っています。そして、新しく洋服を買うときには、今一度きちんと試着をしたり、大人ならではの上質な素材を取り入れたりすることも、おしゃれのアップデートには必要ではないかと思っています。

――かれんさんにとっての審美眼の軸とは?

私は古い家が好きなのですが、それは手をかけてつくられていることを感じるからです。今は、いくらお金があっても、5年もかけて家を建てる人はなかなかいませんが、昔は、建物の材質にも大工さんの技にもこだわって、時間と手をかけてつくる人が少なくありませんでした。それは、洋服も同じです。若いころから、さまざまな国の民族衣装が好きなのは、繊細な手仕事の素晴らしさに心惹かれるから。刺繍やレースなど途方もなく時間がかかる手の込んだ手仕事は、効率重視の潮流の中で、徐々に世界中から失われていっています。その、消えてしまいそうな儚さに惹かれているともいえるかもしれません。

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和洋が織り交ぜられた葉山の家で。©️YoshihikoUeda

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手紬手織りの布、刺し子など、インドの手仕事が大好きなかれんさん。「ハウス オブ ロータス」のウエアもインドで生産されたものを多く取り扱っている。
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旅を通じてその土地のファッションに触れて。アジア諸国をよく訪れていた20代の頃。書籍「Love Of Life」より。


存在感のある人は、シンプルなTシャツでも魅力的
 

――「ハウス オブ ロータス」の2021年秋冬のテーマは、20世紀のアメリカ現代美術を代表する画家、ジョージア・オキーフがイメージソースになっています。女性の生き方とファッションが交差する新しい提案を感じました。

オキーフは、ニューヨークで写真家のスティーグリッツの妻、女性の画家、という人々の注目と期待の中で過ごしていたのですが、そこから逃れるようにニューメキシコ州のゴーストランチに移り、自分の感性に正直に、自由に解放されて、絵を描いて暮らしました。オキーフは、ライフスタイルの中にファッションがあった人だと思います。ニューメキシコの砂漠に立つ彼女の姿は、凛として美しく、衣食住すべてがつながっているのを感じます。

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オキーフの絵と共に。今シーズンのハウス オブ ロータスは、オキーフの絵画からインスパイアされたアイテムが並ぶ。ニット¥52800/ハウス オブ ロータス ©️HOUSE OF LOTUS

――生きることと装うことが同一線上にあるということですね。

ファッションもインテリアもどう生きるかということにつながると思います。多くの人がコロナ禍で立ち止まったときに、その部分を問い直したのではないでしょうか。おしゃれに迷っている人は、今一度、自分が好きなことや好きなものを考えてみるといいかもしれません。存在感のある人は、シンプルなTシャツを着ていても、どういう自分でありたいかというパーソナルな軸があるから魅力的です。「私は私。洋服は単なる、自分にくっついている一部です」というくらいの気持ちで、自分をつくりあげていくこと。おしゃれを楽しむことは、自分を大切にして生きることと、きっと、同じなのだと思います。
 

桐島かれん
1964年生まれ。1986年に大手化粧品会社のイメージキャラクターに起用され一躍脚光を浴びる。以降、モデル、女優、歌手、ラジオパーソナリティとマルチに活躍。1993年に写真家、上田義彦氏と結婚、四児の母でもある。現在は、ライフクラフトブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクターとして世界中を飛び回っている。

桐島かれんさんの日々の暮らしを伝えるウェブマガジン「LOVE OF LIFE!」


桐島かれんさんが 「at Home」 をテーマにお届けするビデオグラフィー「桐島かれん at Home」


ハウス オブ ロータス
桐島かれんさんが元麻布の洋館で1人で始めたセレクトショップがブランドの原点。今年で19年目を迎える。コンセプトは「Happiness of Life」。世界の美しい手仕事や文化が感じられる洋服やジュエリーには多くのファンがいる。ジョージア・オキーフがイメージソースとなっている2021年秋冬からは、より都会的な解釈で美しさを求め、装うことの幸福感を発信。日常のコーディネートが楽しめるエイジレスでエレガントな新作のコレクションとなっている。


ハウス オブ ロータス 青山店では、8月25日(水)より9月12日(日)まで、アフリカ大陸に息づく民族文化、 フランスのスタイリッシュなエスプリ、そして神秘的なイスラム文化が混じり合う場所「モロッコ」の伝統工芸品を扱う Fatima Morocco(ファティマ モロッコ)のポップアップ「Essence of Morocco」を開催。

HOUSE OF LOTUS OFFICIAL SITE>>

撮影/平岡尚子
ヘアメイク/森川丈二(gem)
取材・文/高橋亜弥子
構成/朏亜希子(編集部)

 

 

・桐島かれんさんインタビュー後編は8月31日公開予定です。