旅の準備手帖は今回で最終回となります。最後にご紹介する町は、マース川沿いのオランダ最古の都市「マーストリヒト」です。オランダ最南端、リンブルグ州の州都であり、ベルギーとドイツの国境に接するこの町は、良い意味で「ちょっとオランダっぽくない」雰囲気です。アムステルダム、ユトレヒト、ゴーダなど、オランダらしさいっぱいな町を堪能し、さらにちょっと違ったオランダを満喫したい！という人にはおすすめです。
駅を背にしてマース川にかかる大きな橋、聖セルファース橋を渡って旧市街に進みます。この「大きな川に大きな橋」というのは、他のオランダの町ではあまり見られない光景です。こぢんまりした運河に自転車ですっと渡れる橋がかかっている、というのがオランダの町の印象。マーストリヒトの町は雄大な川に大きな町並みという感じです。この町はたくさん教会があることでも有名。市庁舎や教会など古き良き町並みの中にブティックやレストラン、カフェがずらりと並んでいます。
この町は、美味しいレストランがたくさんあることでも知られています。オランダ一番の美食の町とさえうたわれているとか。さっそく現地で名のしれたレストランを調べ、ディナーの席を確保しようとアタックしてみましたがどこもいっぱいで入れませんでした。行く時は事前予約が必要ということだけ噛み締める結果となりました。。。。
まずは町の中心フライトホフ広場をめざします。６世紀頃から建造がはじめられたという聖セルファース教会はオランダで最も古い教会の一つ。聖セルファース教会のすぐ左隣には、聖ヤンス教会があります。こちらはとても小さな教会ですが、赤い塔が目を引きます。
さて、マーストリヒトを訪ねたのには、実は大きな目的がありました。町の中にたくさんある教会の一つが「本屋さん」なっているという話を聞いたのです。しかも「世界で最も美しい本屋さん１０軒」の一つといわれるほど、素晴らしい本屋さんということで、ぜひとも行ってみたいと思ったわけでした。
（イギリスの新聞「The Guardian」が2008年に選出）
ブックハンデル・ドミニカネン（Boekhandel Dominicanen)という本屋さんなのですが、700年以上昔に立てられた教会の中がまるごとすっぽり本屋さんになっています。
２階、３階にあがると、普段は教会で決して見ることのできない距離感で、石造りの壁や窓を見ることができます。様々な分野の本が並ぶということで、本好きにはそれだけでも楽しいのですが、教会の構造をいつになく身近に感じられるのは、それだけでもワクワクしてしまいます。
かつて多くの人が祈りを捧げた空間で、本を選ぶのはまた格別な気持ちがします。美術書、写真集、料理書、絵本なども充実しています。歩き疲れたら素敵なカフェで休めるのも嬉しいところ。どこまでも高い天井、ゆったりとした空間の中でいただくお茶は格別です。
マーストリヒトの町には、この他にも１２世紀に建てられた「聖母教会」や、ちょっと怖い歴史を背負った１３世紀に作られた「地獄門」など、見所がたくさんあります。そんな名所巡りも楽しいですが、本屋さんでお気に入りの本を探したり、川辺のカフェでお茶をするなど、ゆっくり過ごすのがおすすめ。本屋さん目当てに町を訪れるなんて、なかなかないテーマ設定かもしれませんが、ここはぜひ一度は訪れていただきたい場所の一つです。
さて５回にわたりヨーロッパの小さな町をご紹介させていただきました。読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました！
旅の魅力は、どんなに話を聞いても、本で読んでも、その場所に実際に行ってみなければ、その地のことを本当に知ることはできない、ということだといつも思います。目の前に広がる町や風景をしっかりと受けとめて、時間をかけて噛み締めるように見つめれば、きっとそれだけ心に残るような気がします。本物の絵を見ることと似ていますが、かけた思いの分だけ、心にかえってくるものも大きいのではないでしょうか。
旅先で一足伸ばして、別の町を散策するのは一手間ですが、その手間をかけていただき、心に残る旅をしていただければ嬉しいです。「いつか行く旅リスト」、みなさんもぜひ綴ってください！
インフォメーション
マーストリヒトへの行き方
アムステルダムからインターシティで約２時間３０分。
詳しくは ユーレイルグループのHPごチェックしてみてください。
ブックハンデル・ドミニカネン
Boekhandel Dominicanen
Dominicanerkerkstraat 1、Maastricht
043-4100010
月～土曜9:00～18:00
開店時間は曜日によってことなるので要確認。
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