人のいいところを見つけられる人間でありたい
ーー先ほど「10代・20代は自分の理想とするところに自分がいなかった」とおっしゃっていたので、完璧主義なのかな、と思ったんです。でも“正解がないのが楽しい”というように、柔軟さも大切にされていると。
でも何が完璧かは、それもまた人それぞれ……僕、基本的に「人それぞれ」という言葉が好きですね(笑)。
ーーいい言葉ですよね(笑)。
僕自身は日常生活でも、人のいいところを見つけられる人間でありたいと思っています。「この人の個性、素敵だな」とか、そういう人間観察が俳優という仕事にも活きると思うし、年齢を重ねるにつれて、そういう柔軟さはより大事にしたいと思うようになりました。
以前は、自分の性格をネガティブに捉えすぎるところがありましたが、30歳になって、自分を肯定することも大事だなと思うようになってきました。自分に厳しくすることは大事ですが、逆に自分を少し甘やかしてあげることも、ときには大切なのではないかなって。今はただでさえ疲れてしまう世の中ですから。
ーー先ほどお話にも出た舞台『フェードル』は、新型コロナの影響で一部公演が中止に追い込まれました。このコロナ禍によって、仕事の向き合い方などに変化はありましたか。
30代に入った時期と重なったこともあって、日々考えることは多かったです。外出が減ったので映画や舞台を観に行く機会も少なくなりましたし、それでも久々に足を運ぶと、映画館も劇場もやっぱり特別な空間だと改めて感じました。
それに『フェードル』の時は、「本当は観たいけど、どうしても諦めざるを得ない」という人が多かったと思うんです。逆にそんな中、リスクを背負ってでもエンタメに何かを求めて観に来てくださった方も多くいらっしゃいました。そういったさまざまな気持ちをすごく近い距離で感じることができて、自分が舞台に立てていることにすごく誇りを持てましたし、幸せを感じることができました。
10代、20代のうちは、どこかで評価されたい、いい作品に出たいという思いでやっていたところがあったんです。もちろん今もありますしこれからもあると思うけど、それとは別に、僕の芝居で誰か一人でも喜んでくれたり、その人の生活にいい影響を与えられたりするなら、こんなに幸せなことはないなって。なんか綺麗事になってしまうんですけど、自分の野心とは別に、これからはそういう方向にももっと目を向けたいと思っています。
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林 遣都 Kento Hayashi
1990年生まれ、滋賀県出身。2007年、映画『バッテリー』にて主演デビュー。その高い演技力が評価され日本アカデミー賞など数々の新人賞を受賞。以後テレビドラマなどでも幅広く活躍する。現在、主演を務めた映画『犬部!』が公開中。以降も10月1日に映画『護られなかった者たちへ』、11月に映画『恋する寄生虫』(小松菜奈とのW主演)の公開が控えている。
<作品情報>
舞台『友達』
作:安部公房
演出・上演台本:加藤拓也
出演:鈴木浩介、有村架純、林遣都、浅野和之、キムラ緑子、山崎一ほか
企画・製作:シス・カンパニー
【日程】
東京公演:2021年9月3日(金)~9月26日(日)新国立劇場小劇場
大阪公演:2021年10月2日(土)~10月10日(日)サンケイホールブリーゼ
スタイリング/菊池陽之介
ヘアメイク/竹井 温 (&’s management)
文・構成/山崎 恵
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