モデルでファッションブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクターである桐島かれんさんは、4人のお子さんの母親でもあります。20代からモデルの仕事をはじめ、女優や音楽などでも幅広く活躍していましたが、28歳で結婚を機に、家庭中心の生活に。その後、東京・元麻布の洋館で、世界の工芸品、家具、アンティークのお店をはじめたのは、2007年。三女が生まれたばかりの、子育て真っ盛りの時期だったといいます。かれんさんに、ご家族のこと、結婚生活のことをお聞きしました。

「8年間美容室に行かなかった」4人の子育てを経て、50代で知った本当に大切なもの【桐島かれんさん】_img0
ブラウス¥29700、パンツ¥37400/ハウス オブ ロータス


8年間美容院に行けなかった子育て期


――結婚を機に、華やかな仕事から潔く身を引かれた印象ですが、それまで築き上げたキャリアを惜しいと思うことはなかったですか?

 

20代前半で仕事をはじめて、ずっと忙しかったので、もう少し自分の生活に重きを置きたいと思っていました。結婚して葉山の古い洋館に住み、子どもが生まれると、家庭や子育てが、第一のプライオリティになった感じです。再び人前に出たい、とは思わなかったですね。4人の子どもを育て、さらに子どもたちが小さなころから、犬、猫、うさぎ、ハムスターなど動物も飼って、世話をしていましたし、今も植物や子犬を育てることに夢中です。性格的に「育てる」「世話をする」ということが好きなのでしょうね。なにかを生かすことで自分が生かされているという、人でも動物でも植物でも、育てたり、世話をしたりすることで、充足感を得ている気がします。

――子育てが忙しかった時期は、家庭に埋没して「このままではいけない」と思うことはありませんでしたか?

長女、次女、三女、そして長男……と子どもを育てた12年間、いつも腕の中に赤ちゃんがいる状態でした。美容室には8年間行かなかったですし、夜に出かけることも10数年間なかったです。小さな子どもがいると、自分のことは、ほぼなにもできないですよね。ずっと家にいるので、本当は絵も描きたかったのですが、ゆっくりした時間はとれませんでした。それで、30代に入って三女が生まれたあとに一念発起し、もともとインテリアや世界の工芸品や雑貨が好きだったこともあって、1年間に3週間だけオープンする店をはじめたというわけなんです。子供たちを連れてアジアの国々に買い付けの旅に出て。経営のことなど、なにひとつ知りませんでしたが、文字通り怖いもの知らずでした。でも私は、とりあえずやってみるタイプなのです。なんでも、まずはやってみるdoer(ドゥーアー/実行する人)と、やらない理由をみつけるのが上手なdon’t doer(実行しない人)がいますが、私はdoerでいたいと思っています。

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当時住んでいた元麻布の洋館からの引越しを機に、その洋館でアジア諸国やモロッコなどから集めた工芸品や雑貨などを扱うセレクトショップ「HOUSE OF LOTUS」をスタートする。アジア諸国には子どもと一緒に買いつけにも。書籍「Love Of Life」より。


――結婚自体もdoerでないと、できないかもしれませんね

夫(写真家・上田義彦さん)もdoerなので、今は、それぞれに自分がしたいことをして、尊重し合っている感じです。お互いがすることに関して干渉することはなく、彼は彼、私は私。夫とは美意識も近いし、生活の感覚も似ていますが、見つめ合うのではなく、同じ方向を見ている感じです。きっと、それくらいがちょうどいいのかもしれません。

――子育て中は、どうしても女性の負担が大きく、判断が委ねられることも多くて「なぜ、私だけ……」と、不公平な気持ちを感じがちです

そうですよね。私も子どもが小さなころは、そう思うことがありました。子どもたちの誕生日パーティから夏の旅行のプランまで、最初のころは、夫に一緒に考えてほしいとも思いましたが、次第に諦めて、全部ひとりで決めていました。男の人は、結婚しても変わらず、自分の社会的な役割や達成したいことが生活の軸にありますが、女性はいろいろなものを諦めて、かなりの時間を家事などに費やすことになります。でも、家事も仕事も、なにかを同時進行でできるのは、女性の器用さでもありますよね。男性は、複数のことを同時に考えたり行動したりするのが苦手なのかも。夫にあれやこれやと求めなくなると、すごく気が楽になりました。

子どもが大きくなって、子育ての大変さは忘れてしまいましたが、離乳食をつくるのはそんなに楽しいと思えなかったし、ずっと家にいなければならないし、自分の時間もなくて、子育ては我慢大会でした。ある意味、修行です。でも、それでずいぶん辛抱強くなったとも思います。もちろん、外で仕事をして働くのも、修行のようですよね。職場で嫌なこともあるでしょうし、くたくたになるまで働かなければならないこともある。若いときは、夫も妻もどちらも修行期間のようなものかもしれません。でも、子育てには終わりがあって、必ずトンネルの先に出ることができます。子育て真っ最中で大変な人には、きっと明るい未来が待っているから、とお伝えしたいです。

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日々の暮らしに欠かせない花。花を生けるときは、潔くダイナミックに、一種類の花だけでたくさん生けるのがかれんさん流。


50歳を過ぎて、家事全般が楽しくなってきた


――かれんさんがインスタにアップされる夕食もとても美味しそうです。大人数で食卓を囲む姿も楽しそうですよね

我が家は、自宅兼夫の事務所ですので、夫が撮影などに出かけないかぎりは、家にいますし、夫のアシスタントもずっと一緒。アシスタントは今は3人ですが、多いときは6人のときもあって、大家族のような状態です。今も毎日、昼と夜、10人分くらいのご飯を一緒につくって食べています。

家にご飯があることを知っているので、子どもたちも食べに帰ってくるんです。大人数の料理をつくるのは大変ですが、みんなでつくるし、毎日つくっているうちに、慣れるものです。なんだか50歳を過ぎて、家事全般が楽しくなってきた気がします。家中を整理整頓したいですし、カオスになっている子どもたちのクローゼットもピカピカにしたいですし、庭の畑ももっと大きくしたくて。一度、ハマると凝り性だから、ネットでいろいろな家電や家事の道具を探して楽しんでいます。

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シャツ¥30800、パンツ¥37400/ハウス オブ ロータス

――ステイホームの日々で、お友達とご飯を食べたり、出かけたりすることが減って、寂しくはないですか?

もともと私自身、多くの人とおつきあいするのが得意ではないので、特に寂しいという気はしないんです。女友達って、大勢のグループになると、同調圧力が生まれたり、ネガティブなムードになったりすることもありますよね。無理に友達と一緒にいるよりも、自分のしたいことがあって、同じ目標に向かう仲間がいることのほうが、人生を豊かにするためには大切だと思っています。女同士がつながろうとする力は、子育て中には偉大で、私も幼稚園の送り迎えのときにはママ友たちと井戸端会議をして、ときには子どもを預かったり、預かってもらったり。支え合いながらチームワークで乗り越えることができました。でも、その時期が終われば、お互い次のステージへ。今「ハウス オブ ロータス」の仕事で一緒に働いているスタッフは、みなさん私よりも年下ですが、大切な仕事仲間で、たくさんの力をもらっています。

――かれんさんの暮らしの中で、これは欠かせないという必要なものはなんですか?

「一人の時間」です。子どもが小さかったときは、目覚し時計なしで必ず朝6時ぴったりに起きることができたのですが、家族が起きてくるまでの30分間は、自分だけの時間でした。新聞を読んだり、メールチェックをしたり……。最近は、夜、ワインを飲むようになって体内時計が崩れてきましたが、それでも朝、夫も子どもも犬もまだ寝ている、だれもいないリビングで静かに過ごす時間を大切にしています。

子どもが大きくなったので、少しずつ、新たに暮らしを整えていきたいとも思っています。毎日使う器だったり、カトラリーだったり、ちょっとしたものを少しずつ見直して、アップデートしていくのも、これからの楽しみにしたいですね。
 

桐島かれん
1964年生まれ。1986年に大手化粧品会社のイメージキャラクターに起用され一躍脚光を浴びる。以降、モデル、女優、歌手、ラジオパーソナリティとマルチに活躍。1993年に写真家、上田義彦氏と結婚、四児の母でもある。現在は、ライフクラフトブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクターとして世界中を飛び回っている。

桐島かれんさんの日々の暮らしを伝えるウェブマガジン「LOVE OF LIFE!」


桐島かれんさんが 「at Home」 をテーマにお届けするビデオグラフィー「桐島かれん at Home」


HOUSE OF LOTUS
桐島かれんさんが元麻布の洋館で1人で始めたセレクトショップがブランドの原点。今年で19年目を迎える。コンセプトは「Happiness of Life」。世界の美しい手仕事や文化が感じられる洋服やジュエリーには多くのファンがいる。ジョージア・オキーフがイメージソースとなっている2021年秋冬からは、より都会的な解釈で美しさを求め、装うことの幸福感を発信。日常のコーディネートが楽しめるエイジレスでエレガントな新作のコレクションとなっている。

玉川高島屋 南館1Fプラザ(正面入口)にて、ハウス オブ ロータスの期間限定のポップアップストアを9月17日(金)~10月3日(日)まで開催。「GHOST RANCH (ゴーストランチ)」をテーマに、 20世紀のアメリカ現代美術を代表する画家、ジョージア・ オキーフが描いた花からインスピレーションを受けたプリント、ニューメキシコの風土を感じるリネンやスエードアイテム展開。
また、本館2F ハウス オブ ロータスの店舗では、同期間に「Minakusi - 曙光(しょこう)展」が開催。民族の様々な装身具を大人の遊び心で纏うアクセサリーの新作とパーソナルオーダー会も予定。
※パーソナルオーダー会の日程は、ハウス オブ ロータスのホームページにてご確認ください。

HOUSE OF LOTUS OFFICIAL SITE>>

 撮影/平岡尚子
ヘアメイク/森川丈二(gem)
取材・文/高橋亜弥子
構成/朏亜希子(編集部)


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