皆さん、こんにちは。梅津奏です。

自分より年上の人を対象としたメディアやコミュニティが好きです。

同世代であるあるトークして盛り上がるのも楽しいですが、年上の人と話すのは、それとは違う楽しさがありますよね。先輩としてアドバイスしてもらったり、毎日どんなことが楽しいのか話を聞いて「年を重ねるのって面白そうだな」と勇気をもらったり。

オンでは仕事関係の年上男性陣に紛れ込んで「ほお~。ふむふむ」。
オフでは〔ミモレ編集室〕で年上女性陣に紛れ込んで「へえ~。なるほど」。

お姉さんたちと話していて興味がわいたオペラに関する本と、お兄さんたちが盛り上がっていた日経小説大賞受賞作。こっそり読んで話に追いつこうとする不肖の後輩ワタシ。

そんな私が選ぶ、お気に入りの年上本(年齢ぐいっと高め!)を三冊。どうぞ。


「一日一日心を込めて 玲子さんののんびり老い支度」西村玲子

 

2021年1月にがんで亡くなったイラストレーターの西村玲子さん。実家に西村さんのエッセイ本が一冊あって、ほんのりファンタジー&ロマンチックな世界観(ほんのりなのがポイント。ちゃんと生活感もあるの)が子ども心に好きでした。

本書は、西村さんが最初の入院をした74歳の頃に書かれたものです。病気による不調とつきあいながらも、住まいのしつらえ(断捨離に悩む西村さんがキュート)、おしゃれ(街で見かけた素敵な女性や映画に出てくる女優さんのファッション描写にうっとり)、友人やお子さんたちとのやりとりがエッセイとイラストでいきいきと描かれています。

やがて辿り着く好きなこと、素晴らしい出来事、無理やりに出向かなくてもいつかこちらにやってくる不思議、次はどういうことにつながっていくのでしょうね。

英国ロイヤル・バレエ団の『ロミオとジュリエット』を観に行くことになった西村さん。テレビで偶然にバレエ番組を観た、友人にバレエをテーマにした映画に誘われた。そして、バレエの公演に行くことになった。そんな不思議なめぐりあわせを、「置いてきたバレエが動き出した」と表現する西村さん。

時間が足りない、お金が足りない、と悲しくなることがあまりに多いけれど、好きなことには「やがて辿り着く」と思うとちょっと心が落ち着きます。

喫茶店でコーヒーをオーダーしたら、あれれ!本の帯と似た雰囲気のカップでした♪


「静子の日常」井上荒野

 

パフェのへりにちんまりとおばあちゃんが座っている、なんともかわいい表紙なんですが、騙されてはいけません。この小説はいわゆる「ほっこりかわいいおばあちゃんの物語」ではないのですから!

主人公は、静子さん75歳。夫を亡くし、息子家族と一緒に暮らしています。お嫁さんいわく、「おっとりしていて、さっぱりしていて、よけいなことは言わない」まったく手のかからない穏やかなおばあちゃん。

「おばあちゃんは、あなどれない。」

静子さんは「穏やかなおばあちゃん」なんだけれど、それは全然嘘じゃないんだけれど。その内心や日常は、私たちが思っているような人畜無害なものではないみたいです。亡くなった夫への想いとか、ちょっと素行が怪しい息子にしかけるワナとか、思春期まっさかりの孫娘への無邪気な(ふりした?)介入とか。こんな賢いおばあさんになりたいわ、私。


「人生論 あなたは酢だこが好きか嫌いか」佐藤愛子・小島慶子

 

直木賞受賞作家、97歳の佐藤愛子さん。小説家と女優の両親を持ち、異母兄が詩人のサトウハチロー、二回の結婚は夫のモルヒネ中毒や借金により破綻、という波乱万丈な人生を送っている女性です。小説も、そういったご自身の姿が色濃く出ていて圧倒されるものばかり。

本書は、タレント・エッセイスト・くまモンの小島慶子さんと佐藤さんの往復書簡。二人の共通点は、「家族の大黒柱であった/である」という点です。

慶子さんは我慢のし過ぎです。
愛し過ぎです。愛が深いから、求める愛も深くなるのです。
バケツの水をぶっかけてごらん。そうしたらスッキリする……、しないか。これを荒治療といいます。
私の夫に対する愛は受容でも安らぎでも喜びでもなくて、破壊と改造と支配です。一族の女たちの理想を塗りたくられた夫を牢獄から引きずり出し、砂糖菓子を叩き割るように、丸裸にしてやるのです。
涸れるどころか、満々と湛えられているご主人への憤怒の熱湯が、今の私にはいっそ羨ましい。

夫婦について・人生について、ケイコさんが問い、アイコさんが答える。アイコさんがケイコさん夫婦のことを「お釈迦様と孫悟空」に例えていたけれど、アイコ&ケイコがまさにそれ。喜怒哀楽の高低さ激しめの孫悟空ケイコさんと、提示する解決策が(令和的感覚でいうと)非常にヤバンなアイコ様。これはおもしろい。めちゃくちゃおもしろいです。スカッとしたい方、ぜひ!


いかがでしたでしょうか。

三冊の共通点は、「読んだ後、前向きな気持ちになること」。おしゃれな先輩、聡明な先輩、元気な先輩というのは、社会の宝だと思います。ありがたやありがたや。

佐藤愛子さんのラストエッセイ、「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」。130万部を突破しているベストセラー「九十歳。何がめでたい」の続編です。読み終わったら祖母たちに葉書を書こうっと。