皆さん、こんにちは、梅津奏です。

三連休明け、更に祝日をはさんで、なんだか心にゆとりのある一週間です。(と、自分に言いきかせています。実際は、せっかく走り出したのに小石につまづいてつんのめったような気分……)

東京はまだまだ暑さがしぶとく居座っていますが、それでも日が落ちてからの空気はすっかり秋。衣替えをしていてウールの肌触りにふとノスタルジーを感じ、近所を歩いているとどこからか金木犀が香り。

「女心と秋の空」とはよくいったもので、一日の中でころころと変わる気温や景色にハッとさせられるこの季節。こういう「ふいをつかれる」季節って、人は恋に落ちやすいと思うんです。

銀座の月光荘で買ったポストカード。カードはどんどん使う派ですが、これはなかなか使う機会がありません(笑)。

普段は澄まして生きている大人にとっても、秋の恋は制御不能。今日は、そんな恋物語を三つご紹介します。


「旅する女」筒井ともみ

 

トップバッターは脚本家・作家の筒井ともみさん。一人の死んだ女と、四人の生きている女の物語。雑誌「FRaU」で連載されていた頃、毎号買うわけじゃなかったけれどふと読んではドキリとしていました。筒井さん、また女の人の物語書いてくれないかなあ。

この本の中で恋に落ちるのは、やり手編集者のケイ、57歳。急死した友人のマンションを訪ねた帰り、ふらりと立ち寄ったビストロで白ワインを一杯。

そのときだった。不意に、熱いかたまりのような思いがケイの体の奥底からこみあげてきた。もういち度、恋がしたい。これまででいちばんと思えるくらい、とっておきの恋がしてみたい。あまりにも唐突な思いではあったけれど、とても正直な感情だった。

「死」がまさにその辺に漂っていることを感じ、そのことを味わいながら唐突に襲ってきた「恋がしたい」という思い。なんとも原始的な恋のはじまりですね。

たしかに、恋の落ち方って二種類ある。「人」に落ちるか、「恋したい」という願いに落ちるか。皆さんは、どっち派でしょうか?


「マチネの終わりに」平野啓一郎
 

 

石田ゆり子さんと福山雅治さんが主演した映画もすばらしかったですね!Amazonプライムで何度観たことか。陰影のある美しきアラフィフの恋、秋冬にぴったりの小説&映画です。私も秋は、ゆり子ボブにしようかな。(おやめ)

恋愛小説には「だって恋だもん」という伝家の宝刀があるせいか、詩情と理屈のバランスが色々な配合のものが存在します。その中から好みの小説を見つけるのって結構難しい。この本は、非常に私好みの塩梅でした。そしてきっと多くの人にとってもそうだったから、ここまでヒットしているのでしょう。

美しくないから、快活でないから、自分は愛されないのだという孤独を、仕事や趣味といった取柄は、そんなことはないと簡単に慰めてしまう。そうして人は、ただ、あの人に愛されるために美しくありたい、快活でありたいと切々と夢見ることを忘れてしまう。しかし、あの人に値する存在でありたいと願わないとするなら、恋とは一体、何だろうか?

素晴らしい人を自分のものにしたい、と思う気持ちと、素晴らしい人の横に並べる自分になりたい、と思う気持ちは似ているようで違う。できるならば、後者の気持ちで恋がしたいなと思います。


「センセイの鞄」川上弘美

 
「まぐろ納豆。蓮根のきんぴら。塩らっきょう」カウンターに座りざまにわたしが頼むのとほぼ同時に隣の背筋のご老体も、
「塩らっきょ。きんぴら蓮根。まぐろ納豆」と頼んだ。趣味の似たひとだと眺めると、向こうも眺めてきた。

これですよ、皆さま。

冒頭のこの部分を読んだ瞬間にこの本に恋に落ちることを確信しました。

40歳を目前としたツキコさんと、ツキコさんが通っていた高校で国語を教えていたセンセイ。二人は偶然居酒屋で再会し体温低めなところで意気投合、以来つかず離れず、酒飲み友だちとして交友を深めていきます。やはり恋愛だの友情だのにおいて、食の好みが合うというのは大事なんですね。そして、この小説の映像化にあたり脚本を担当したのが、一冊目に著書をご紹介した筒井ともみさんなんです。くう~!たまらん。

この二人がずっと「よき酒飲み友達」ゾーンをふわふわと漂うのか、一歩先に進むのか、ぶつっと途切れてしまうのか。昔は、「センセイ、ツキコさん、どうぞこのままでいてください」という思いが強く、本の真ん中あたり以降はなかなか読み返せませんでした。「二人にはどうあってほしいと思った?」という議題で、誰かとおしゃべりしてみたいな。あ、今度読書会の課題図書にさせてもらおうかしら。

よく行く喫茶店には老眼鏡が置いてあります。老眼鏡かけている男性が好きです。(おだまり)

 

いかがでしたでしょうか。

最近、ミモレブロガーの小黒悠さん〔ミモレ編集室〕で選書企画をやっています。先日いただいた「恋がしたくなる本」というオーダーに「旅する女」を選んだのですが、最後まで三冊で迷ったのでここで一挙ご紹介。気分すっきり!

恋っていいですよね。皆さま、よい恋を。

 

悠さんとZoomで選書会議。「悠さんの選んだこの本、あの人にめちゃくちゃぴったり!」「これとあれで悩んだ~」とぺちゃくちゃわいわい。写真は、とあるジャンルの選書について、何冊読んでもぴんとこなかったとジェスチャーつきで説明してくれている悠さん。かわいい(いつも)。