真似から学び、多様性が生まれる
安藤:本の中に、物語には型があり、まず真似ることが創作に必要という話が出てきますね。
佐渡島:全ての学びは真似るから始まっていると思っているんです。例えば僕らがこうして話すのも、大人の真似をして言語を覚えた。資本主義の仕組みのなかだと「オリジナルにならないといけない」とか「個性が大事」と言われる。すると「真似はよくない」という気持ちが作られて「多様性は真似ることからは生まれないんじゃないか」という気持ちになる。
でも実際は、真似たとしても、結局オリジナリティが出てくるんです。人はみんな違う存在だから、真似しきれない。その真似しきれない、差の部分を観察することで、成長していくんじゃないかなと思っています。
安藤:佐渡島さんが、自分の内側と徹底的に向き合ったときに「学びたい」という気持ちが出てきたという話がありました。
佐渡島:僕は会社のみんなに向かって「ヒット出すぞー!」と社長として言いたくても、力強く言えないんです。ヒットしたら嬉しいけど、しなくても楽しいし重要なこともあるよねと思う。自分は何をしたいんだろう?と考えたら、「新しいことを知りたい」と気づいたんです。僕は学びの熟達者になりたい。新しく知ったことをみんなに面白いよって広めて、伝えたい。
学びたいだけなら研究者になればいいんだけど、仲間として集まってくれた人たちに「僕は最近こんなことを学んだよ!」って伝えて、一緒にトライアンドエラーをしたい。さらに、みんなで新しく学んだことを世間に伝えたいと思っています。『観察力の鍛え方』を書きながら、自分は何をしたいのか、何者なのか、何者でありたいのかを観察し続けて気づきました。
安藤:本の最後に、「一流のクリエイターに大切なのは◯◯だ!」という、大事な一文が出てきてすごく感動しました。「◯◯」はぜひ本を読んでいただきたいです。観察力って理知的なタイトルなんですけど、ものすごく熱量が高く深い愛に満ちた良い本なので、たくさんの人に手に取って読んで欲しいなと思いました。
佐渡島:本を読むと見たことのある話だなと思いそうなくらい、語り尽くしました。ぜひ、本を読みながら、味わい直してもらえればと思います。
佐渡島庸平(さどしま ようへい)
株式会社コルク代表取締役社長。編集者。1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、「モーニング」編集部で井上雄彦『バガボンド』、安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。03年に三田紀房『ドラゴン桜』を立ち上げ。小山宙哉『宇宙兄弟』もTVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説も担当。12年10月、講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社・コルクを創業。インターネット時代のエンターテイメントのあり方を模索し続けている。コルクスタジオで、新人マンガ家たちと縦スクロールで、全世界で読まれるマンガの制作に挑戦中。
安藤美冬(あんどう みふゆ)
作家・コメンテイター。1980年生まれ、東京育ち。累計発行部数20万部、新しいフリーランス・起業の形をつくった働き方のパイオニア。慶應義塾大学在学中にオランダ・アムステルダム大学に交換留学を経験。ワークシェアに代表される、働き方の最先端をいく現地で大きな影響を受ける。新卒で(株)集英社に入社、7年目に独立。本やコラムの執筆をしながら、パソコンとスマートフォンひとつでどこでも働ける自由なノマドワークスタイルを実践中。KLMオランダ航空、SK-Ⅱ、インテル、アクエリアスなど様々な企業の広告にも出演、働く女性のアイコン的存在である。最新刊『つながらない練習』
『観察力の鍛え方 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』(SB新書)
佐渡島庸平 990円
メガヒットをうむために、鍛えるべきたったひとつの能力。
それは、「見る力」。多くの人の感情を動かす作品も、大衆に愛される商品も、すべては「観察する力」から生まれているーー。『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』『マチネの終わりに』を仕掛け、新人マンガ家の育成に携わる著者が、その頭の中をすべてさらけ出したビジネス・クリエイティブで最重要となる画期的思考。
『つながらない練習』
安藤美冬(PHP研究所)1925円
私たちはつながりすぎだ。
「スマホ依存」「つながり疲れ」が叫ばれる昨今。SNSによる誹謗中傷も問題になっている。
本書は、そんな現代人が抱える課題を解決するために、スマホやSNSを少しだけ手放してみる練習、ネガティブな情報、ニガテな相手から距離を置く練習を提案する。
著者の経験談を交えながら、私たちがいますぐ実践すべき「つながらない練習」を49紹介。
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