皆さん、こんにちは。梅津奏です。
とうとう、とうとう行ってきましたよ!

10月1日にオープンした、早稲田大学国際文学館村上春樹ライブラリー。
村上春樹さんの大ファンなのに、著書以外のものごとに関して腰が重い私。ライブラリー開館もニュースで確認していたものの、「予約とるのが大変そうだし、落ち着いた頃にひっそり行こう」と思っていたんですね。
そうしたら、〔ミモレ編集室〕のお友だちが声をかけてくださったんです。村上春樹ファンだということを、常日頃からアピールしていてよかった。「好きを伝え、つなぎ、つながる(編集室のコンセプト)」とはまさにこのことです(ドヤぁ!!)。
さて、雨の日曜日。傘をくるくる回し足取り軽くスキップしながら早稲田に向かいました。

想像していたよりコンパクトで、すっきりかわいらしい外観。
もともとなんの変哲もない無味乾燥な建物だった、早稲田大学旧四号館。村上さんが「ここがいい」と指定したというこの建物に、隈研吾さんがリノベーションを施しました。
リノベーションにあたり隈さんが提案したのが、「普通の建物に孔をあける」こと。村上さんが小説によって私たちの世界に孔をあけてくれるように、ライブラリーにも風穴(隈さんいわく、洞窟)があけられ、新鮮な風が吹き抜けるようなイメージになっています。孔の入り口は、ウェーブする細い木材のトンネルでぐるりと囲われていて、仰々しくないところもまた村上さんの端的な筆致を思わせる。シンプルで清潔感がありながら、「むむむ?」と好奇心が掻き立てられる不思議な吸引力のある建物です。
わくわくしながら受付をし、一階入口を入ってすぐに待ち構えているのが、「階段本棚」。

地下一階にくだっていく階段がトンネルのようになっていて、両脇に本棚が。現在の配架のテーマは「村上春樹とその結び目」。村上作品とそこからつながる本たちがキーワードごとにたっぷり並んでいます。選書と配架を担当したのは、ブックディレクターの幅允孝さん。幅さんは早稲田大学の文化構想学部で非常勤講師をしているそうで、配架作業には教え子の学生さんたちが協力してくれたんですって。

右見て左見て、「ああ!ノルウェイの森があそこに!」「え、この本がその本の隣にあるとはこれいかに」と大忙し。本棚の隙間や階段のあちらこちらには、かわいい白いお人形も。

何度も何度も階段を登ったり下りたりしたあと、一階のギャラリーラウンジへ。


ギャラリーには村上作品が勢ぞろい。年代別に並べられた本のほとんどは、村上さんご本人からの寄贈とのこと。村上作品はほぼすべて読破しているはずの私ですが、「あの本の単行本はこんな装丁だったのか!」「あれ、この本はあの本より後に発売されたんだっけ……」と発見ばかりで大興奮です。



ギャラリーの反対側にはオーディオルームが。

無類の音楽好きで知られる村上さんのプライベート空間を想像させる、ゆったりとした空気が流れる部屋。とっても座り心地のよいソファに身を鎮め、持ち込んだ本を読んでいるリラックスした大人たち……。声を交わすことはありませんが、静かな同志たちの姿も含めて幸福感にあふれたスペースでした。
二階に上がると、ラボ/スタジオと展示室が。

展示室で現在開催されているのが、「建築なかの文学、文学のなかの建築」。村上春樹ライブラリーができるまでの構想の経緯や模型、つかわれた素材などなどと一緒に、建築に関連した選書コーナーなどもある、見ごたえ十分な贅沢な展示です。


観覧はここまで。三階以上のフロアは書庫や研究室になっているそうです。ふう、楽しかった……。なんだか喉が渇いたぞ。

ということで、ラストは地下一階の「橙子猫-Orange Cat-」。早稲田大学の学生さんが主体となって運営しているカフェです。村上作品のイメージをもって研究しセレクトした、こだわりのコーヒーと軽食・スウィーツを提供してくれます。村上さんが経営していたジャズ喫茶「ピーター・キャット」で使われていたグランドピアノも置いてありますよ。

とても感じがよく手際もよい店員さんでした。早稲田の学生さんなんでしょうね。おいしそうなグレイズドーナッツと温かいコーヒーを注文し、るんるんで席に着くとその目の前には……!

「村上さんの書斎」コーナー。残念ながら中には入れませんが、実際に村上さんが使っている書斎と同じ間取りで、家具も同じものや似たものをセッティングし再現されています。村上さんも、よく似ていると太鼓判を押したらしいですよ。そうかあ、こういう部屋で執筆しているんだ。
「私もいつかこんな書斎がほしい!」とうっとりながめながら、おやつに舌鼓をうつ不肖のハルキストでございました。この地下一階スペースは、私の理想の部屋だなあ。本棚があってピアノがあって(もう20年くらい弾いてないけど)書斎があってコーヒーが飲めて……。ここは事前予約無しで入れるから、ぜひまた来よう。どなたかご一緒しましょう。

いや~、楽しかった!
いわゆる「偉人の功績をたたえる空間」ではなくて、村上作品を読んでいるときに私が感じている解放感・浮遊感を体感できる、良い風が吹き抜ける平和なライブラリーでした。
予約をとってくださったMさん、写真をたくさん撮ってくださった悠さん、本当にありがとうございました。幸せでした!
そして読者の皆さま、本日は「好きの暴走列車」ブログにお付き合いいただき誠にありがとうございました。来週までに頭を冷やしてまいります。それではまた。うふふふふ!
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