独り身に染みるメッセージ


『逃げ恥』は完全に、男女平等をライトに追求したドラマだったと思います。「愛しているならやってくれてもいいのでは?」という言葉のもとに、これまで過剰な家事負担を強いられてきた女性の思いを、コミカルに、でもハッとさせられる描き方をしていました。他方、『ナギサさん』は様々なジェンダーの押し付けを、やはりコミカルに、そして嫌な人を誰も登場させないというソフトな手法で、見る人に気づかせていました。どちらも男女平等に焦点に充てていたのに対して、この『判捺し』はもっと広く、独り身の人間に対してもたくさんのメッセージが込められている気がしています。

 

今の時代、一人で楽しめる娯楽がたくさんあるし、食べていけるだけの仕事があれば、正直一人のほうが圧倒的に気楽ではあります。むしろ人と暮らすことのほうがデメリットが多かったりする。それゆえ生涯未婚率がこんなにも上がり続けているのでしょうが、その楽しさは果たして10年後、20年後も同じか? それは誰にも分かりませ。だからこそ、今「一生一人で平気」と思っている女性には、「一応別の人生も考えてみるか」という比較資料としてこのドラマを見ることをオススメしたい。そして、間もなく生涯未婚率に算定もされなくなる私は(生涯未婚率とは50歳の時点で一度も結婚したことがない人の割合だそうなので……)、「親きょうだいや友達など、せめても今ある人間関係とは丁寧に向き合っていこう」と自戒の念を込めながら見ていきたいと思っています。

構成/藤本容子


前回記事「『婚姻届に判を捺しただけですが』は“逃げ恥”を超える新しい結婚観を提示できるか?」はこちら>>

 
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