薬を勝手に止めると健康に被害が出ることも
しかし、血圧は1日の中でも変動があるというのは自然なことです。タイミングによって、収縮期血圧が120 mmHgの時もあれば、140 mmHgの時もあるかもしれません。例えば、少し体を動かしたあとには血圧が一時的に上昇します。あるいは緊張しているだけでも上昇するかもしれません。
その時の血圧を見て、血圧の薬を飲もうと判断すると間違う可能性があります。なぜなら、その後30分もすれば、薬を飲まなくても血圧が140 mmHgから120mmHgに減少するかもしれないからです。それなのに一時的な140mmHgを見て追加の薬を飲んでしまえば、その後の血圧は下がりすぎてしまうかもしれません。
実際に、過去には数字をみて、必要時に血圧の薬を飲むという管理が行われていた時代もありました。しかし、現在ではその方法論は否定されていて、数字に合わせて血圧を低下させるような方法では、心臓の発作を招いたり、腎臓の障害を招いたりするリスクが高いことがわかっています(参考文献1)。
また、薬の中には、突然中止してはいけない薬というのもあります。例えば、抗うつ薬は、急に中止してしまうと2〜3割の確率で健康被害を出すことが知られています(参考文献2)。代表的な症状としてめまいや頭痛、ひどい場合には幻覚が見えてしまったり、電気ショックが体に走ったりするような症状を出すこともあります(参考文献3・4)。
このため、抗うつ薬を突然中止するのは危険で、医師の監視のもと、徐々に減らしていかなければいけません。このように、中止方法にコツが必要という薬もあります。
薬を始めるのに知識が必要とされるのと同様、安全に中止するのにもそれ相応の知識が必要とされます。特に長期に内服している薬の場合には、医師や薬剤師としっかりと相談しながら、薬のやめ方、やめ時を決めることが大切です。
前回記事「高齢者には有害な頭痛薬や睡眠薬がある!? 意外と身近にある「間違った薬」とは?」はこちら>>
参考文献
1 By the 2019 American Geriatrics Society Beers Criteria® Update Expert Panel. American Geriatrics Society 2019 Updated AGS Beers Criteria® for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults. J Am Geriatr Soc 2019; 67: 674–94.
2 Overview | Depression in adults: recognition and management | Guidance | NICE. .
3 Fava M. Prospective Studies of Adverse Events Related to Antidepressant Discontinuation. J Clin Psychiatry 2006; 67: 14–21.
4 Lejoyeux M, Adès J. Antidepressant discontinuation: A review of the literature. J Clin Psychiatry 1997; 58: 11–6.
写真/shutterstock
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