詳しく調べたり比較したりすることもなく、薦められるままに入った生命保険を、長年そのままにしている人は多いもの。エッセイストの小川奈緒さんは、あるきっかけでそんな保険の見直しを決めました。
50歳を目前に、お金や暮らし、ファッションなどさまざまな見直しを始めた小川さんの新刊『ただいま見直し中』から、今回は保険や造園業者へのモヤモヤに向き合った話を公開します。
担当のベテラン生保レディは親の紹介
加入している生命保険を、見直すことにした。
娘の出産を機に、両親が長年契約している保険会社を紹介され、親が信頼を置いている相手であることにすっかり安心して、他社との比較検討もせずに契約した保険である。
保障内容も細かい部分まで理解できておらず、数年に一度、相手から新しいプランへの切り替えを提案されるたびに「なるほど、そうしたほうがよさそうだ」と素直に提案を受け入れながら、10年以上も継続してきた。
先日またプラン変更を提案され、月々の支払い金額もあまり変わらないし、一度は「いいですよ」と契約書にサインをしたのだが、担当者を見送った後、なんとなーく、モヤモヤとした気持ちが残った。
その保険会社の担当者は、契約の更新やプランの見直しのたびに毎回自宅に来てくれるのだけど、とにかく滞在時間が長い。もう70代の女性で、40代から営業をはじめられたそうだから、この道 30年のべテランさんだ。母との付き合いも長いため、共通の話題としてまず母の近況についてしばらく話すのが、おきまりのパターン。
その後、本題の保険の話に入っても、「たとえばわたくしも、これこれこんな事故や病気で数日入院したことがありましてね、そのときはこの保険に入っていたおかげで......」と実例を出しながら説明してくれるのだが、そうした話もひとつひとつが長い。で、聞いている最中は、わかりにくいところは何もないように感じるのだけれど、話があちこち飛ぶせいもあるのか、後から思い返してみると、「それで、新しいプランに変更したら何がどうよくなったんだっけか」と、肝心なことがよくわかっていないことが多いのだ。
一番の問題は、わたしの保険の知識が足りないため、理解が悪い点にある。でも、ちょっといじわるな見方かもしれないけれど、相手の営業テクニックもやはり巧妙なのだと思う。
母と同じくらいの年齢の女性に「余談はいいから本題だけお願いします」なんてなかなか言えないし、そもそも本題と余談の境界線が見えない、ずーっと同じテンションで続いていく話し方なのだ。
それを真面目に聞いているうちに、「たしかにそうした不測の事態で困らないように、この保障はつけておくべきかな」という気持ちになってくる。ほら、この時点でもう相手の思うツボだ。オプションをつけるほど安心に安心は重なっていくわけだけど、そのぶん毎月の支払額は高くなるわけで、それが収入に見合っていないことに、10年かかってようやく気がついた。
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