寂 聴 ですが、そういうことはだいたいは性格ですから、なかなか簡単にはいきません。これまで多くの人に話を聞いてきましたが、聞けば聞くほど、結局、人間が幸せになるのも不幸になるのも、その人の性格によるところが大きいと思います。

 

まなほ 比べることでの不幸に関していえば、他人との比較だけでなく、自分の過去と現在を比べて、「あのときにこうしておけばお金持ちになれていたのに」とか、「あのときに告白しておけば幸せになれたはず」とか、そういって後悔している人もたくさんいると思います。

寂 聴 それが人生というものです。でも、そうしたことをいつまでもクヨクヨ後悔してしまうというのは、ある程度、性格にも関係したことだから仕方ないことです。クヨクヨする人は、何にでもクヨクヨします。それを直せと言ったところで、簡単に直せるものではありません。

 

まなほ クヨクヨしている間に、かえってチャンスを逃してしまうということもあるでしょうね。

寂 聴 クヨクヨしてばかりいたら、そういうこともあるでしょう。でも、そのことに気づいた人は、まだ救われる道があります。「こんなにクヨクヨしていると損をする。だからクヨクヨするのはもうやめておこう」と思って、その後悔を自分を変えるきっかけにできる人がいます。そういう人も、いないことはありません。

まなほ 性格によって、ものごとのとらえ方が違うということですか?

寂 聴 そうです。性格です。何でも不幸にとらえる人がいる一方、何でも自分によいようにとらえる人もいます。それは性格です。

まなほ 「ピンチはチャンス」という言葉がありますが、仮に悪いことが起きても、それを悪い、悪いと嘆くだけの人もいれば、これは逆に何かのチャンスかもしれないと思ってがんばる人もいます。もし自分が失敗しても、とらえ方によっては、それを逆に生かす可能性があるということですね。

寂 聴 その通りです。