バドミントン選手として2度のオリンピックに出場するなど、第一線で活躍してきた潮田玲子さん。引退後はコメンテーター、そして二児の母として仕事と育児に奮闘しています。しかし潮田さん、現役時代は女性ゆえの体調の波に苦しめられたそう。その経験から、昨年、元プロテニスプレイヤーの杉山愛さんたちと、女性アスリートの身体に寄り添う一般社団法人・Woman’s waysを立ち上げました。様々な知識を身に付けられた今、現役時代を振り返って思うこと、そしてスポーツ界に伝えたいこととは?

「世界選手権と月経周期が重なった! 女性ホルモンの影響がわかると、チームメイトにかける言葉も変わります」潮田玲子さん[PR]_img0
潮田玲子
1983年9月30日生まれ、元バドミントン日本代表選手。福岡県出身。幼い時からバドミントンを始め、小学生の時に全国小学生大会女子シングルスで全国3位入賞。中学校3年の時には全国中学生大会女子シングルスで初めて全国大会優勝。その後は、女子ダブルスでペアを組んだ小椋久美子さんとのコンビ“オグシオ”ペアで、女子ダブルス 全日本総合選手権大会を2004年から5年連続優勝、2007年世界選手権女子ダブルス銅メダル 2008年には女子ダブルスで北京オリンピックに出場、5位入賞。2009年からは、池田信太郎さんとのコンビ“イケシオ”ペアで全日本社会人大会 優勝、全日本総合選手権大会 優勝。2012年 混合ダブルスでロンドンオリンピックに出場、同年9月に現役を引退。2014年より、(公財)日本バドミントン協会 広報委員を務めている。2021年5月、一般社団法人Woman's waysを設立。女子アスリートが安心して競技を続けられるよう、月経などの課題に向き合い、寄りそう活動を行っている。


現役時代は「ゼロ」と言ってもいいぐらい身体に対する意識も知識もなかった、と振り返る潮田玲子さん。月経で体調が悪くても我慢するのが当たり前と考えていたそう。
 

“月経ってコントロールできるんだ!”という発見


「でも2007年の世界選手権がちょうど月経周期と重なると分かって。オリンピックの選考につながる大事な試合だったので、『どうしよう』と悩んで婦人科に相談したところ、ピルで周期をズラす、という方法を教えてもらったんです。それまでは月経ってだだ煩わしいもので、やってきたら鎮痛剤を飲んで何とかその期間をやり過ごす、という感じだったので、『月経ってコントロールできるんだ!』というのは発見でしたね。

ただ、ピルを飲んだことでちょっと体重が増えてしまったのと、飲み続けるには月に1回婦人科を訪れて処方してもらわなければいけない、というのがハードルになって。現役時代って海外遠征と練習の日々なのでほとんど休みがないし、稀に休みがあったとしても、休息に時間をあてたくて、結局、だんだん行かなくなってしまいました」

潮田さんがそうだったように、日本の女性アスリートは、海外選手に比べて身体に対する意識が相対的に低いのが実情のようです。

「婦人科検診はもちろん、定期的な健康診断すら受けるアスリートは少ないんです。私も結婚して初めて婦人科検診を受けましたし。

でも海外の選手はもっと自分の身体に関心を持っているようです。Woman‘s waysのメンバーの杉山愛さんは、海外選手に婦人科検診に行っていないと言うと『何で行かないの!?』と驚かれ、その場で予約を入れられたそう(笑)。日本はまだまだ、婦人科は妊娠したら行くもの、ピルは妊娠したくない人が飲むもの、という印象を持っている人が多い。残念ながらとても遅れていると思います」

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このままではいけないと感じた潮田さん。昨年、元プロテニスプレーヤーの杉山愛さん、元飛び込み選手の中川真依さん、元バレーボール選手の狩野舞子さんとWoman‘s waysを立ち上げ、女性アスリートがもっと自分の身体と向き合うためにと、セミナー開催やSNSでの発信など、積極的なアナウンス活動を始めました。
 

女性ホルモンの波に向き合えたら、試合でのパフォーマンスも違っていたかも


「きっかけは、ちょうど1年ぐらい前に月経に関する取材を受けたことです。そこでいろいろ答えているうちに、『月経周期に伴う身体のコンディション変化にもっと向き合いながらトレーニングしていたら、パフォーマンスも違っていたかも』と気づいたんです。ただ、理想を言うは易いけど、当時を振り返ると身体について学ぶチャンスも場もなかったな、と思って。『ならば自分がサポートしよう!』と思い、4人で発起人となって団体を立ち上げたんです」

しかし活動を始めてみると、女性アスリートたちの身体への無関心さは、潮田さんが現役だった時代と今とで全くと言っていいほど変わっていないことに気づいて驚きの連続。

今も女性アスリートたちの多くは、月経の影響で調子が悪くても、それは自分の頑張りが足りないんだと落ち込んだりしています。中にはマラソンなど長距離を走る競技や審美系の体重が少ないほうが良いとされている競技の選手なんかは無月経になりやすい傾向があるのですが、『月経なんてない方がラク』だと放置してしまって、それが原因で疲労骨折を繰り返してしまうなど悪循環に陥っていたりします。だからセミナーを聞いてくれた選手からは、『身体と向き合うきっかけになった』とか、『月経のせいだと思うと気持ちがラクになった』などと言ってもらえました。

私は月経のとき、体調面への影響はそんなにひどくなかったんですけど、メンタルに出るほうで。今でも感情の起伏が激しくなって、子育てでもイライラしやすくなったりするんですけど、今は知識があるので『気を付けよう』とセーブできるし、一方で『そういう周期だからしょうがないんだ』と自分を責め過ぎなくもなりました。当時、そういったことが分かっていたら随分違っていただろうなあと悔やまれますね」

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