最近、「更年期」について、もっと理解を深めようという動きが高まりつつありますが、その立役者となっているのが、産婦人科医という立場から、さまざまなメディアで情報を発信している高尾美穂先生。ミモレでの連載「高尾美穂先生に教わる『女性ホルモンと人生のこと』」も大好評。そんな高尾先生に、改めて更年期について知っておくべき心得や、必要なアクションについてお話を伺いました。
高尾先生が医師として数ある科の中から「産婦人科医」を選ばれたのは、どういった理由からでしょうか?
「私は、もともとは内視鏡科医がいいかなと思っていたんですが、内視鏡科だと、その患者さんと一瞬しか会う機会がないんです。でも私は、縁があった人と一生つきあっていきたいタイプで。産婦人科医なら、赤ちゃんのときから、月経のトラブルを抱えたときや、妊娠・出産のとき、更年期、閉経後と、1人の人を生涯にわたってずっと診ていける。それがいいなと思って、産婦人科医を選んだんですよね。それと、産婦人科に来る患者さんは、悩みがこんがらがっていて話が長いことが多いですが、それを聞くのが私にとってはまったく苦じゃなく、そんな悩みを整理整頓することも好きだったんです。言ってみれば、更年期の患者さんを診たくて産婦人科医になったようなものです」
更年期とは閉経を挟んだ前後10年間の“時期”のこと
更年期というと、それだけでネガティブなイメージを持つ人が多かった中で、正しい知識をもっておけば、過度に不安を抱えることはないという気運も少しずつ高まってきたように思います。
「更年期とは閉経を挟んだ前後10年間の“時期”のことで、誰にでも必ず訪れます。不調が出る人もいれば、出ない人もいますし、10年間といっても最も症状が出やすいのは閉経前の2年間と、閉経後の1年間なので、この時期をうまく乗り切ればいいんです。更年期は、女性ホルモンの分泌がなくなることに慣れるための時期で、ココロとカラダの曲がり角であることは間違いないので、スピードを緩めることが大切。トップスピードで走っているとカーブをうまく曲がりきれませんが、スピードを緩めれば楽に曲がれますよね。具体的には、今までパートナーや子どもや仕事のために使っていた時間を、自分のために使うようにして、食べる、動く、休むという健康の三要素を意識することです。更年期の不調は生活習慣を整えるだけで、予防・改善できることがわかっていますからね。それと、更年期に起こる困りごとをすべて解決するのは難しいので、“今よりちょっとよくなればいい”くらいの気持ちで、うまくやり過ごすことを目標にすることです。そして、小さな変化(成功体験)に気づいてください。自分のカラダで起こる良い変化は、ぜひ、嬉しがってほしいですね。更年期を乗り切れば、ホルモンに振り回されない“凪”の時期がやってくるので、その時期を楽しみに待つといいと思います」
「かかりつけ医」と「自身のセルフケア」の両輪が“新・セルフケア”!
また、更年期の対策として、「かかりつけ婦人科医」を持っておくことも大切だと高尾先生。
「更年期は、特に閉経前のエストロゲンがアップダウンを繰り返しながら減っていくときの不調が最もつらいものですが、ホルモン補充療法(HRT)でホルモンを足すことで、アップダウンを抑えられて、なだらかな下り坂になるので、症状が楽になります。それ以外にも、漢方薬などの選択肢もあるので、自分に合った方法を相談するためにも、特にかかりつけ婦人科医をもっておくことはおすすめです。普段から健康診断や婦人科健診を受けておいて、他の病気がないかチェックしておかないと、更年期の不調なのか、他の病気が原因なのかわかりませんからね。受診をするときの心得としては、あらかじめ自分の症状を整理しておいて、どの症状を一番治したいのかを伝えることです。更年期には悩みが多いので、症状から自分の気持ちまで、あれもこれも医師に伝える人が多く、そうするとどの症状で一番困っているかが伝わりにくくなります。「自分がどうしたいか」、事前に頭の中で整理しておきましょう。
もちろん、医者まかせではよくないので、治療とともにセルフケアを組み合わせることが理想的。生活習慣の見直しとともに、食生活の改善のひとつとして、サプリメントの摂取を考えてもよいかもしれません。女性ホルモンに似た作用をもつエクオールという成分が注目されていますが、サプリメントを選ぶ時には、医療機関から販売されているものなど、信頼できるものを選びましょう。
自分自身で行うセルフケアと、専門家にしてもらうセルフケア、両方があるといいですね。専門家に相談することも、結局は、自分でアクションを起こさないと始まらないのです。『まず一歩。何かしてみたら?』とお伝えしたいですね」
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