言いそびれた言の葉たち。いつしかそれは「優しい嘘」にかたちを変える。

そこにはきっと、守りたいものがかくれているのだ。

これは人生のささやかな秘密と、その解放の物語。

 


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第15話 推し活は突然に②

推し活費、それは人生の光熱費...!43歳主婦の人生を明るく照らす「推し」のパワー_img0
 

「か、完成……!? できちゃった……?」

智美は、誰もいない家の寝室で、おもわず小躍りしながらつぶやいた。

昭一、智美、息子の斗真の3人家族が住む90平米のマンション。中古で買ったときにリノベーションして、小さいながらにウォークインクローゼットをふたつ作った。

そのうちのひとつは、アウトドアグッズやクリスマスツリーなども引き受けているものの、智美が占有している。

そこに、先日の試写会でゲットした秋野隼人グッズをひとまず押し込んでいた。そして今日、パートもなく昭一たちもいない平日の午前中を費やして、写真集やパンフレット、マグカップ、それからこの1週間で集めた雑誌の切り抜きなどを、クローゼットの奥にいい感じに並べてみた。

まるで私設展示会のような趣き。クローゼットにのれんのようにかけてある大判ストールをそうっとよけると、その向こう、壁際に整然と並ぶ隼人グッズ。

きゃーと叫びたいような衝動を抑えて、智美はスマホでその「祭壇」を撮影する。

そしてその写真を、とあるLINEグループトークにえいっと送り付けた。