言いそびれた言の葉たち。いつしかそれは「優しい嘘」にかたちを変える。

そこにはきっと、守りたいものがかくれているのだ。

これは人生のささやかな秘密と、その解放の物語。

 


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第14話 推し活は突然に①

 

女子高生時代、智美はいわゆる「アムラー」だった。

ちょっとしたベビー服くらいの重量感があるルーズソックスを履き、サラサラの茶色ヘアで、Ralphのセーターに極限まで短くした制服のスカート、小室ファミリー一色のカラオケ。

時代にももてはやされ、自分たちが一番イケてると信じて疑わずに青春を謳歌。

だから、クラスにいるアイドルの追っかけをしているようなコたちを、心の中でちょっとだけダサいと思っていた。リアルな近隣男子校の子と付き合っている自分の人生のほうが、絶対に楽しいと。

そんな智美にとって、それは完全に予想外のアクシデントだった。

43歳になって、自分がアイドル俳優に夢中になってしまうなんて。10分で2万円も使ってしまうなんて。