入院の前と後で生活レベルが変わることも


例えば、下のグラフは心臓のポンプの機能が低下してしまう「心不全」と呼ばれる病気の患者さんの経過の一例です(参考文献1)

自分の最期をどうしたいか。元気なうちに親しい誰かに伝えておこう【医師・山田悠史】_img0
参考文献1を参考に作成

「人生山あり谷あり」と言われたりもしますが、病気の経過も決して平坦ではなく、突然谷底に落ちていってしまうような瞬間が何度かあるのが見てとれます。

この「谷」の時、患者さんはおそらく入院をしているのだと思いますが、これはあまり前触れもなく突然出現することがあります。この経過を眺めていると、「病気は突然やってくる」ことがある、また「繰り返しやってくる」こともある、というのがわかります。

 

また、さらに細かいところをみていくと、「谷」から回復しても、同じレベルまでは回復していない様子がわかります。つまり、入院前と後では生活のレベルが突然変わってしまうことがあります。例えば、入院前は一人で歩けていたのが、退院後は車椅子が必要になったというような変化が、週単位の入院を経て起こることがあるのです。

「突然」の変化ということでいえば、事故もわかりやすい例かもしれません。多くの人が「自分には起こらない」と思っていたり、そもそも何も想像をしていなかったりするのが普通かもしれませんが、どれほど防ごうと思ってもその確率にゼロはなく、誰しもが「突然」経験しうるものです。ある日を境に、突然、体の機能に変化が生じたり、命を奪われたりしてしまうことがあります。

だからといって、そのことを意識し続けていると心が疲れてしまいますし、実際に意識し続けることが必要なわけではありません。

ただ、事前に、必要性を感じにくい元気なうちに、「万が一のことがあったらこうしたい」という思いを言葉にしておく、誰かに伝えておく。あるいは、すべてを叶えられなくなる時が来た場合に備えて、「何を一番優先したいのか」「自分の生きがいは何か」を明らかにしておく。こういった準備がない場合に、自分の意思を伝えられないまま不運にして最期を迎えてしまうことがあるのです。

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前回記事「がんになった料理人が「人生で一番優先させたかったこと」とは?患者の意思が治療を決める」はこちら>>


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参考文献
1 Allen LA, Stevenson LW, Grady KL, et al. Decision making in advanced heart failure: a scientific statement from the American Heart Association. Circulation 2012; 125: 1928–52.

構成/中川明紀
写真/shutterstock

 
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