超高齢社会を生きる私たちが望むのは、ただ長生きするのではなく、“死ぬまで元気”でいること。なるべく人の手を借りず、最期まで自立した生活を送りたい。そのために、今すぐできることは何か。NY在住の老年医学専門医、山田悠史先生の新刊『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(6月24日発売)から、その答えをひとつご紹介します。
希望通りの最期を迎えるために事前準備を
自分の最期を考えるにあたって、事前の準備の大切さを教えてくれるデータがあります。米国のデータですが、「最期を迎える人の約7割が、自分で意思決定ができない」というものです(参考文献1)。
例えば、感染症で命を奪われそうな時、血圧が低下してしまって脳への血流を維持できなかったり、人工呼吸器につながれたりすることで、コミュニケーションを取るのが難しくなってしまったりすることがあります。
あるいは、脳卒中が突然に発症、その日を境に意識を失ってしまい、コミュニケーションが取れなくなるということもあります。
そんな時、あなたの代わりに意思決定をしてくれるのは、あなたのことを理解する家族、友人、そしてあなたの治療にあたる医療チームということになります。
では、そのような中で何を根拠に意思決定をするのかといえば、一番はあなたの気持ちを代弁してくれる家族が、あなたの気持ちになって考えた結果です。
先の研究では、代弁をした人の約半数が子ども、3割が配偶者、1割がその他の親族と、やはり圧倒的に血縁関係のある家族が意思決定をしていることが報告されています。日本でも、最も多いのはおそらく家族が代弁をするというケースでしょう。
また、もう一つの根拠となるのが「事前指示書」です。事前指示書は自分に行われる医療の方針を、判断能力を失った時のために事前に書面上で明示しておくものです。先の研究の中では、意思決定能力を失った患者の67.6%が事前指示書を持っており、事前指示書があることが、本人の事前の価値観に沿った終末期のケアが行われることと強く相関していたと伝えています。
米国では、各州でそれぞれ事前指示書を元気な時に作成する文化が日本よりも醸成しているため、研究でも比較的高い確率で事前指示書があったのだと思いますが、日本では作成している人は少ないかもしれません。
もしこのような準備がないと、突然の病に際し、自分が望んでいなかった治療が、自分が望んでいなかったかたちで行われるということが高い確率で起こりえてしまいます。
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