スタイリスト福田麻琴さんが、身の回りの”愛するモノ”について語ります。

 

去年、久しぶりにトートバッグを買い替えました。 
綺麗なチェーンバッグでもなく、Hのロゴもついていない、とてもとてもシンプルなレザーのトートバッグ。
なんでもいいじゃない、こういうバッグは......と侮ることなかれ、実はこういうものが一番使うんです。
現に週に5日はこのどちらかを使っています。たっぷりの大容量でなんでも入るし、シンプルなデザインでどんなコーディネートにも合うんです。そして大体のコーディネートは黒と茶があれば大丈夫。
本当は同じトートを二色でも良かったくらいです。 

 

シンプルで丈夫でたくさん入る……
実はその条件をクリアするバッグは各ブランドから出ています。
きっとどの時代もそれを求める人がいて、マイナーチェンジをしながらも決して無くならないシンプルトート。どんなに小さなバッグブームが来ても、一定層大荷物派がいるんです、私のように。
人(私)は荷物からまだまだ解放されない。 最近じゃミニバッグが流行っているし、ほぼ手ぶらみたいな若者を見かけることも少なくありませんが、財布のミニマル化に失敗した私はやっぱり長財布が落ち着くし、タンブラーだのストールだの、もしもの時の絆創膏など、安心と引き換えに大荷物を受け入れています。正直、絆創膏が登場するのは一年に一回、いや二年に一回かもしれないけど、ないよりはあったほうがいいですよね(笑)。
大は小を兼ねる、という考え方はもう古いんでしょうか。 本音を言えばそりゃ私だって憧れているさ、小さなポシェットに……。

 

と愚痴っぽくなりましたが、一昨年くらいからそうも言っていられなくなりました。
生活や仕事の変化から、iPadを持ち歩くようになったから。 今までどうにか携帯で済ませていたことも、そろそろ限界がやってきて、ちゃんとキーボードを使わないと指も目も疲れ果ててしまうのです。 
そこでPCを持ち運べるトートバッグを探し始めたってわけです。 私みたいな人、多いんじゃないかしら?

 

色々見て最後は迷いもせずに「これください」と言っていました。 
出会うってこと自体が奇跡ですが、こんなにも自然な流れで進んでいくものなんですね。 
とにかく一番シンプルでした。 デザインも素材感も持ち手もロゴも。 そしてしっかりしたレザーのわりに軽かったんです。 
これがどうしてもいい! というより、不満が何一つ見つからなかったもんでね。 
そして1年間、ほぼ毎日使っている今もなお見つからない。そして今どうやら売り切れているらしいんです。
どこにでもありそうでない。きっとそこらへんがこのトートバッグの魅力です。 
毎日使う物だからこそ、お気に入りのモノをね。

 

 


写真・文/福田麻琴


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