メディアの記者や商業ライターは「個人のバイアスを排除し、なるべく客観的に書くのが大事」と習ってきました。しかし、SNSなどを通じて個人の発信が影響力を持つようになった昨今では、発信者の名前を明らかにし、自分の意見を交えて書く署名原稿が増えています。今日は自分の視点を入れて書く場合と入れずに書く場合、それぞれのメリットや使い分けのコツをご紹介します。

 
 


「私を入れずに書く」ってどういうこと?


少し前のこと、美容エディターを目指す編集部の若手の子に、美容記事をつくる練習を兼ねて、コスメの新製品紹介やプレゼントページの原稿を書いてもらいました。上がってきた原稿の冒頭に

「私は敏感肌なので〜」

とあったので、「このページは客観的に書いてほしいから、私を入れないで書いて」と伝えたら、キョトンとされました。「私を入れないで書く」の意味がわからず戸惑ったようでした。

原稿には、私(自分の目線)を入れる場合と入れない場合があるという話からすべきでした。自分を出さずに客観的に情報を整理して伝えることを「メディア発信」、書き手個人の感想や主張を伝えることを「自分発信」と呼びます。……呼びますって、なんだか周知の事実みたいに言いましたが、私の中の分類です。今日はこの分類で説明していきますね。

 

例えば、雑誌のプレゼントページのプレゼントする商品の説明には、“誰が書いているのか” “私がどう思ったか”の情報は必要ありません。雑誌の原稿の場合、対象となる読者にとってどう良いかの情報を整理して伝え、自分の視点は入れずに書く“客観的な紹介”がほとんどです。これが「メディア発信」です。

一方、“誰が書いているのか”を明記した上で“私がどう思ったか”を書く“主観的な紹介”の仕方もあります。「敏感肌の私にも刺激がなくて使いやすかった」と感想を述べるのは「自分発信」です。

SNSやブログでコスメを紹介する投稿は、後者が多いですね。“書いている私がどんな人で”その“私がどう思ったか”を発信することに意味があります。

その後輩に書き直し方を説明しながら、私はふと思い直しました。

「商品紹介は自分の目線を入れないで書くのがフツー」と思っていた私の感覚が古くて、SNS世代、デジタルネイティブと言われる世代にとって「自分の目線を入れて書くのがフツー」なのではないかと。

どっちが正しくて、どっちが間違っているということではありません。自分目線を入れて書く場合とまったく入れないで書く場合、客観的な分析の中に自分の目線をちょっと入れる場合……など用途に合わせて書き分けられることが大事です。そして、昨今のWEBメディアでは、どちらかというと自分目線を入れて書く方が主流になりつつあり、「私の入れ方」が上手い人ほど活躍の幅が広がりそうです。

では、もう少し詳しく「メディア発信」と「自分発信」の違いと使い分けのコツを解説していきます。