ふらり立ち寄ったお店が、心のサードプレイスになることも
ある日「ベーカリーわに」を訪れたのは、小さな子どもを抱えたお母さん。お昼ごはんにパンを買いに来たのに、「イヤイヤイヤ!」とギャン泣きする子どもにオロオロしてしまいます。
「いい加減にしなさい!」とついにブチ切れたお母さん。子どもを厳しく叱りつけますが、子どもはさらにヒートアップ! そんな修羅場を見たコッペパンわには、お母さんのためにちょっと変わったパンを爆誕させます。コッペパンわにの機転でようやくお昼にありつけたお母さんは、思わず涙。
とあるサラリーマンは、コッペパンわにのカレーパンが食べたくて何度もお店を訪れるものの、いつもタイミング悪く上司に呼び出され、結局買えずに店を出るはめに。
気弱で不器用なサラリーマンに自分を重ねたコッペパンわには、サラリーマンのために夜に店を開き、彼が大好きなカレーパンを作って待っていてくれたのでした。
お客さん視点で描かれる「ベーカリーわに」は、気弱だけれど心優しい店主が日頃のストレスをちょっぴり癒してくれる、そんな場所なのです。
家庭や仕事でうまくいかないことがあったとき、ふと立ち寄ったお店の店員さんに、励ましをもらった経験を持つ人は少なくないのではないでしょうか。大した会話を交わさなくても、ささやかな親切や真心をお裾分けしてくれる。本作は、そんな自分の日常には欠かせないサードプレイスを、いつまでも大切にしたくなる作品です。
接客に奮闘するコッペパンわにと、心優しい店主を慕うお客さん。両方に自分を重ね合わせながら読み終える頃には……誰かが丹精込めて作ってくれた、おいしいパンが食べたくなるはずです!
著者プロフィール
類(るい)さん
新潟在住の漫画家。任侠ゲームと特撮が好き。既刊に『茶トラのやっちゃん』『茶トラのやっちゃんとちーちゃん』(いずれもKADOKAWA)がある。
【ツイッター】@ruuiruiruirui
『がんばれ! コッペパンわに』
著者:類 KADOKAWA 1210円(税込)
小さな街でパン屋を営む主人公のコッペパンわに。予期せぬトラブルに見まわれたり、困ったお客さんに振り回されながらも、おいしいパンを届けるために誠実に仕事と向き合い続けます。個性豊かな仲間たちや街の人たちに応援されながら、コッペパンわには店主として成長できるのか? SNSで話題を呼んだ同作に、未公開エピソードを含む傑作描き下ろし30P以上を収録して単行本化!
構成/金澤英恵
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