「毒親」。1989年に作られた言葉ですが、日本で一般的に知られるようになったのはここ数年です。メディアで取り上げられることで、子ども時代を振り返り、自分の親は「毒親」だったと認識した人もいるでしょう。

でも、認識したその先は? 

Twitterでの試し読みが3.2万「いいね」され反響を呼んだ『そんな親、捨てていいよ。〜毒親サバイバーの脱出記録〜』が3月23日に発売されました。「毒親」を捨て、自らの人生を取り戻すことに成功した「毒親サバイバー」のオムニバスです。

作者は、幼い頃から実の両親に心理的虐待を受けてきた尾添椿さん。第一話は、現在使える制度を全て使って、彼女が「毒親」と絶縁するまでのストーリーです。

 

椿さんが生まれ育ったのは、両親と一人娘の椿さんの核家族。幼い頃から、両親は「毒親」特有の言動をしてきました。たとえば椿さんが「えほんよんで」と絵本を二冊持ってお願いすると、母親は「どちらか一冊にしなさい」と言います。ここまではよくある親子のやりとり。ですが……

 

両親は、子どもと親の意見が異なる時、子どもの恐怖心を煽るようなことを言って従わせる「毒親」だったのです。

どんな時でも子どもを親に従わせ続けることは、反抗する力と考える力を奪うこと。

椿さんは学校で周りの子と仲良くするやり方がわからなくなってしまいました。両親に相談するととんでもない言葉が返ってきます。

友達なんていらないでしょ?

 

椿さんがだんだん自分の意思を持ちはじめると、父親からの暴言が増えました。彼女は髪の毛を抜いたりなど、自分を痛めつけるように。

暴言を吐かれ、具合が悪くなっても放置されたまま。ひどい状態の家庭でしたが、学校では友達に恵まれ、大好きな絵を描くことが精神の安定を保つ方法にでした。両親は絵を描くことには反対しないものの、進学や就職には猛反対。
親の異常さを感じた椿さんが、縁を切るために使った制度とは? 続きは試し読みをどうぞ!

椿さんは毒親が存命中に「捨て」ましたが、第二話のヤマダさん(仮名)は、亡くなってから「捨てた」例です。

 

ヤマダさんは経済的虐待を受けてきました。
父親は、自分のためにしかお金を遣わない人間でした。

 

母親は父親の言いなりになり、普段の生活は母親一人の稼ぎだけで回っている状態。ヤマダさんが高校生の時、父親はリストラされ、借金まみれに。

こんな毒親の元から逃げるように自立し、結婚して自分の家庭を築いた彼の元に、「お父さんが変死体で発見されました」とショッキングな連絡が来ます。
その時に彼が思ったのは、

 

絶対めんどくせえ…

ということ。
ヤマダさんは、職場の顧問弁護士に相談し、喪主をバックレるだけでなく、相続放棄までし、見事に「毒親を捨てる」ことに成功します。


本作を読むと、「毒親」にも種類があることがわかります。子どもの人格や尊厳を失わせるモラルハラスメントだけでなく、子どもにお金をかけない経済的虐待、兄弟との扱いに差をつける差別、など。

そして「毒親サバイバー」たちが強調するのは、自分の親が毒親だと気づいただけではなく「血のつながりがあるのだから捨ててはいけない」という思い込みからも逃れるのが重要だということ。

作者は、両親から暴言を浴び続けた末に思います。

家族ってなんだ
血のつながりが全てなのか?

けれど、第二話のヤマダさんは言います。 

世間的には非常識にあたる行動をしたけれど
俺にとっては当然のことをしたまで

第三話では、父親のモラハラに苦しめられてきた女性が言います。

なんて親不孝なの
それでも娘なの?

そんな言葉は無視して大丈夫!

毒親サバイバーたちが語る毒親との回想シーンは読んでいて辛くなる箇所もありますが、 各話を読み終えると、彼らの人生を変えるための勇気と行動力が心に残る作品になっています。

本作で毒親に悩む人へ生き方のヒントを与えたい、と作者は言います。このメッセージを読んで、ご自身が毒親に苦しんでいる立場の方だけでなく、周囲に苦しんでいる方がいたらぜひ教えてあげてほしい、と思いました。

あの親から生涯逃げられない、とあきらめないで、と。

 


【漫画】『そんな親、捨てていいよ。〜毒親サバイバーの脱出記録〜』第1〜2話を試し読み!
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『そんな親、捨てていいよ。〜毒親サバイバーの脱出記録〜』
尾添 椿 (著)  KADOKAWA

親を捨てたら、人生を取り戻せた。自らも毒親を捨てた漫画家・尾添椿が、毒親サバイバーたちを取材。彼らはどうやって毒親を捨てたのか、そして捨てたことで得たものは。毒親「捨て方指南」コミックエッセイ。


作者プロフィール 

尾添 椿
2013年イラストレーターデビュー、2016年から漫画家として活動。両親と絶縁したことを漫画にしてSNSに公開したことをきっかけに、エッセイ漫画を描きはじめる。『生きるために毒親から逃げました。』『こんな家族なら、いらない。』(いずれもイースト・プレス)が代表作。
Twitterアカウント:@ozoekkk
Instagramアカウント:@ozoek12

 

構成/大槻由実子
編集/佐野倫子