菊池から菊池川に沿って北西部に。以前もこちらでご紹介した目的地「花の香酒造」は玉名郡和水町にあります。

今年に入り「産土」ブランドを新たな取組みとし、それを基軸に大きく舵を切りました。それはこの地域の農業から変革を起こすということをビジョンをもとに、骨折りながらも未来に向けての投資でもあります。

最近では、意識の高い酒蔵は米作りから始まり、地元に根付いたお米で醸し、ブランドの個性として発信されています。
花の香酒造の「産土」はさらにそこを深掘り。江戸時代にこの土地に作られ絶滅状態にあった古代米「穂増(ほませ)」の復刻を菊池の農家さんとともに行い、さらにその先の未来は、昔本来の田園風景を取り戻すことにあります。

「人間は利益本位で動いてきたため、筍が売れると竹を植え、家作るのに杉が売れると、後先考えず杉を植えてきました。近代化が進みそれらが必要になくなると、現在の放置された山がどんどん増えてきたんです。
田畑は本来自然の循環をうまく利用し、そこには菌やいろんな微生物が生存し、また共存してきました。今、その循環が少なくなり、微生物どころか菌の存在しない、ある意味きれいな田んぼが多いです。でもそれは本来の姿ではないんですよね。」
そう語る神田社長。


確かに、昔の田園風景は区画整理もされてなければ、比較すると一瞬野ざらしのままのようにも見えてしまう。花の香の田んぼは他と比べても水が透き通るようなキレイな感じは見受けれない。でもその原因は畑には無数の菌や微生物が共存し、自然本来のヒエアルキーを保ちながらうまく循環され、土の特性をうまく利用した田畑という証しなのです。
近代化の波は合理性と利便性がプライオリティになってしまい、その土地の持つ本来の強さを活かされず、残念なことに、農薬や化学肥料などによって取り返しがつかないほど壊されてきました。
神田社長のお話を聞いてると、もはや酒蔵としての理念というより農業に対する理念の方が強く感じてしまうぐらいですが、まさに花の香の「産土」が在るべき姿だと神田社長は確信しています。

その熱い思いが見事に実り、「産土」がお披露目になったのは今年に入ってのことですが、即完売するほどの人気ぶり。
あえてこの土地に根付く古代米にこだわり、一切機械に頼らず、昔ながらの手植えの米作りからスタートという「原点」へ還りながらも、従来の概念に囚われない視点で「進化」を追い求め挑み続ける哲学が、新鮮な味を産み出し、またこの動きが新たな農業の礎になることへの期待が膨らみます。
一度「産土」を味わっていただきたい思いとともに、日本の食糧危機が囁かれてる今日、SDG's の動きが一過性になることなく、未来に在るべき「食」と「農業」の姿を今こそ考えていきたい思いです。

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