アンナはいったい何者? その答えは社会の矛盾にあり??
もう1人の詐欺師も周囲をまんまと騙していきます。ドイツの大富豪の令嬢になりすまし、ニューヨークの社交界の名士たちから富を巻き上げていった詐欺師アンナ・デルヴェイ(本名アナ・ソロキン)も実在する人物です。アンナのこの事件をもとに、Netflixがドラマ化し、『令嬢アンナの真実』のタイトルで全世界独占配信中です。
ジュリア・ガーナ―が演じるアンナはある意味魅力的で、ファッショナブル。インスタグラムで有名になった彼女はアンチヒロインのようにも扱われています。アンナ・デルヴェイ財団という会員制クラブを設立するために「新しいビジネスを作り出す」と、自信たっぷりに話すアンナの姿はアメリカンドリームとして見紛う危うさがあるのです。
しかも、20代の女性が性差別や人種的差別を乗り越え、融資を訴えかけているようにも見せかけます。間違いなく、それは同情を逆手に取ったアンナの手口であり、自分自身が有名になりたいという自己顕示欲の塊がそうさせているのですが、後味の悪さが強く残ります。
アンナは滑稽な詐欺師。そう言い切れずに、裁かれるアンナを追う女性ジャーナリストも葛藤を繰り返します。彼女はいったい何者なのか? その答えには社会の矛盾が作り出していることにも大いに関係していそう。でも、社会のせいにするだけでは何者にもならない。そんな厳しい目を持ち合わせています。
ドラマ『令嬢アンナの真実』も手掛けたのは女性です。『グレイズ・アナトミー』などを代表作に持つドラマ界のレジェンド的クリエイター、ションダ・ライムズがプロデュースしています。厳しい世界で成功したライムズもまた、女性たちに向けて履き違えたアンナの成り上がりから学ぶべきものを訴えかけているのではないでしょうか。
遠い世界で起こったスキャンダルを気になる存在にさせるドキュメンタリー『Tinder詐欺師』とドラマ『令嬢アンナの真実』。どちらも軽妙なタッチで描かれているものの、鋭い視点は隠せません。
前回記事「賛否両論の『SATC新章』が見せた50代女友達のリアル」はこちら>>
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