4月1日、株価ともにドル/円の為替レートを映し出す証券会社の掲示板。写真:AP/アフロ

このところ予想以上のペースで円安が進んでいます。以前は「有事の円買い」という言葉があり、ウクライナ戦争のような危機が発生すると、日本円はむしろ買われることが多い通貨でした。しかし、今回はその常識がまったく通用しません。日本円に何が起こっているのでしょうか。

 

2021年前半のドル円相場は、1ドル=105〜110円程度の水準で取引されていましたが、後半から円の本格的な下落(ドルの上昇)が始まり、2021年10月には114円台に突入。22年に入るとさらに円安に拍車がかかり、一時は1ドル=125円を突破しました。

かつて日本円については「有事の円買い」という言葉があり、世界経済が不安定化すると、円が買われるケースが目立ちました。世界経済が不安定化したタイミングで円が買われる理由は、日本に対する信用が今よりもずっと高かったからです。

世界経済は、基本的に米国中心に回っており、米ドルは世界の基軸通貨として認識されています。

すべての投資は米ドルを基準にするというのが金融業界の常識ではありますが、ドルだけで運用するのは、単一の通貨に偏り過ぎているのでリスクが大きくなります。世界経済が不安定化した時には、安全資産であるドルに資金が集まるものの、ドル以外の通貨についても保有したいと考える投資家は少なくありません。

またドルが安くなる局面では、一時的に資金を避難させる先も必要となります。日本は中国に抜かされるまでは米国に次いで世界第2位の経済規模があり、日本円は世界の投資家から信頼されていました。このため世界経済に混乱が発生すると、米ドルとともに円が買われることが多く、米国の景気の見通しが悪くなると、日本円がさらに買われることもしばしばでした。これが「有事の円買い」です。

このような理由から、日本円を買いたいと考える投資家が常に一定数、存在しており、日本円は下落しにくい通貨と思われていたのです。ところが、ここ10年で状況は大きく変わりました。

 
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