コンサルティング会社のアクセンチュアと同社の管理職が、社員に違法な長時間労働をさせたとして書類送検される出来事がありました。コンサルティングと言えば典型的な知的労働であり、成果で賃金を払うというイメージが強い業種です。またアクセンチュアは外資系企業ですからコンプライアンスに関しては厳しいと思われていました。
このような企業で違法残業の問題が発生した背景としては2つ考えられます。1つは職業柄、どうしても成果が強く求められ、結果的に長時間労働が常態化するという問題。もう一つはコンサルティングという仕事が、近年大きく様変わりしているという現実です。
一般的にコンサルティング業界というのは、自身が成長したいという目的で入ってくる人が多い業種です。そうなると、社員の中には会社からやめろと言われても、より良い成果を求めて頑張り過ぎる人が出てきます。また、一般的な事業会社と同様、その会社にずっと勤めようと思っている人もいますが、一方で、そこでの経験を生かして企業幹部に転職したり、独立するというキャリアを描く人も少なくありません。
このような人の場合、多少、無理をしてでも良い成果をあげて、自身の成長につなげたいと考えがちです。こうした社員が多いと、結果的に長時間労働が常態化し、それが全社的に当たり前となってしまいます。
実際、一部の外資系コンサルティング会社では「Up or Out」、つまり昇進するか辞めるかという厳しい要求を社員に課していたこともあり、厳しい仕事に耐えられる人だけが来ればよいという社風でした。このような、ある種、苛烈な社風というのは、コンサルティング業界やローファーム(弁護士事務所)、投資銀行、マスメディアなどに多く見られます。
筆者は若い頃、マスメディアと投資ファンドに勤務し、その後、独立してコンサルタントになりましたから、結果的に長時間労働の業界一直線でキャリアを積んでしまいました。今は時効ですので白状しますが、若い頃は3時間睡眠が当たり前で、会社には嘘の残業時間を報告していました(今ほどハイテクではないので誤魔化しができました)。
キャリアのために頑張りたいという欲求そのものは、自身の経験もあるので、筆者は全否定しませんが、これが会社として当たり前となり、その意向がない社員に対しても過剰労働が強制されるような状況は避けなければなりません。その意味で、今回の書類送検は、残業規制というルールは業界に関係ないことを示したもの考えてよいでしょう。
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