4月11日スタートのNHK連続テレビ小説(以下朝ドラ)『ちむどんどん』は、本土復帰前の沖縄で生まれ育ったヒロイン・暢子が、西洋料理を学ぶために上京し、やがて沖縄料理の良さに改めて気づく……というストーリー。ガチマヤー(食いしん坊)なウチナーンチュ(沖縄人)である筆者の視聴意欲をとことんかき立てる設定です。

2001年に放送された朝ドラ『ちゅらさん』も沖縄が舞台で、ゴーヤーチャンプルー、サーターアンダギーといった沖縄料理が登場していましたが、今回は料理が主題ということで、よりバラエティ豊かな沖縄料理が登場し、さらに料理を通じて沖縄の精神文化までも描いてくれるのではないかと期待しています。


というのも、沖縄人の気質を表すとき、ゴーヤーチャンプルーなどの料理を引き合いに“チャンプルー精神”という言葉がよく使われるからです。“チャンプルー”とは「混ぜる」という意味ですが、どんなものでも選り好みせずに混ぜていこうとするこのチャンプルー精神は沖縄文化全般に見ることができます。それは、諸外国との交易がさかんだった琉球王朝時代や第二次大戦後のアメリカ統治時代など、常に異文化と接してきたことで培われたものかもしれません。
 

 

沖縄人の精神を理解するには“チャンプルー”な料理が最適
 

そこで、沖縄料理を例に取ってチャンプルー精神を考えてみたいと思いますが、一番わかりやすいのは、炒め物や汁物の材料として欠かせない「昆布」かもしれません。実は沖縄では昆布は採れないのですが(売られているのも北海道産だったりします)、琉球王国が昆布貿易の中継地だったことから普及し、今では地元の産物でもないのに数多の食材を差し置いて主役級の存在感を放っています。

そういう意味では、アメリカ統治時代に普及した「ポークランチョンミート」も無視できません。日本本土では「スパム」として知られているこの加工食品は、もちろん外国より持ち込まれたものですが、今では玉子焼きに添えたり、ゴーヤーチャンプルーに用いたり、味噌汁の具になったりと沖縄の食卓で大活躍しています。

沖縄の食料品店に並ぶスパム。写真:ロイター/アフロ

このほか、「ステーキ」「ハンバーガー」「タコス」というアメリカ統治時代に広まった洋食も今では沖縄のソウルフードとして親しまれています。ちなみに、近年メジャーになった「タコライス」も沖縄発祥です。ソウルフードとして根付いたタコスをアレンジしたのが発端で、当初は沖縄の中でも一部地域でしか知られていなかったのが、ここ30年くらいで全国区になりました。

いずれにしても、沖縄の定番料理の多くが異文化とのチャンプルーによってでき上がったもの。チャンプルー精神を理解するには料理が最適かもしれません。

 
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