左手で歯ブラシ、そして食事!? 挑戦したことすらない左手生活がスタート
一般病棟で過ごす、入院3日目の朝。いろいろと考えてしまい、さっぱり眠れませんでした。相変わらず、右手も右脚も「動け!」の命令にはまったく反応せず、です。
なんで、こんなことになってしまったのでしょうか。
脳出血や脳梗塞の原因のひとつに、高血圧があります。確かに私の血圧は高めで、血圧を下げる降圧剤を飲んでいたこともありました。ただ、薬を服用後、上の血圧が100以下になってフラフラすることと、「降圧剤を飲むと、一生続けなければならない」と聞いたことで、いつの間にか飲まなくなっていました。
たまに血圧は測っていましたが、高くても上が150くらいで推移。もちろん高いんですが、まさか倒れるとは思っていませんでした。
そこで心がけたのが、塩辛いものは何となく控え、朝はトマトジュースに黒酢を入れて飲み、ドレッシングはアマニ油のミネラル塩で作るなどといった、自分なりの「血圧コンシャス」な生活。そば茶も淹れて飲んでいたし、2キロほど増量してしまった体重も、プチ断食などで4キロほど落としていたのです。
そんなことをつらつら考えるうちに「薬は避けてしまったけれど、飲みたくなかったんだから自己責任だなあ。そのほか、できそうなことは日々、自分なりにやっていた。これで倒れちゃったんなら、仕方がない」と、自分なりに納得しました。
それよりも問題なのは、飲酒量です。私は成人して以来、妊娠中と授乳中を除き、365日中360日以上は間違いなくビール(ダイエット中はレモンサワーやハイボール)を長年飲んできました。近年は子供が寝た後に、350缶を4缶がスタンダード。飲み会では、カラオケで何を歌い、どう帰ってきたかわからないくらい酔っ払うのが常でした。飲みすぎても具合が悪くならず、二日酔いがほぼない私は、ある温泉旅館のお酒の自販機が、空っぽになるまで飲んでしまったことも……。
「飲んでいる時が、一番幸せ」だった以上、これも仕方がない。今思うと異常ですが、夫にたしなめられても控えなかった私が悪い。ということで、これにも納得。
そう納得はしたものの、「歯ブラシをしましょうね」と車椅子に乗せてもらい、洗面所に連れて行ってもらって愕然としました。左手で歯ブラシ? できなくない?
苦労しながらも何とか磨いてベッドに戻ると、3日ぶりの食事が運ばれてきました。脳出血後は食事を摂ると具合が悪くなることがあるため、点滴のみで過ごしていたのです。「顔も左側が動かしにくいと思うので、トロミをつけた食事です」と看護師さん。そう、先ほど洗面所の鏡で見たところ、顔の右側が全体的に下がっていて、動きがめちゃくちゃ鈍くなっていたのです。これまた、ショック!
「ご飯も、左手で食べるのか……」といちいち戸惑いながら、お箸の横に置いてあったスプーンを使って、何度もこぼしながら食事をとりました。
脳出血で倒れたのは仕方ない、と納得しましたが、なぜ動かなくなったのが利き腕の右側なのか。「これはもう、絶対に動かすしかない!」と、悲壮な覚悟を決めたのでした。
次回は、いよいよスタートしたリハビリや入院生活についてレポートします。
写真/萩原はるな、Shutterstock
構成/宮島麻衣
前回記事「48歳2児の母が突然脳卒中で倒れた日「右手右脚が動かない」」>>
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