私生活では10歳の娘の母。大学院でフィルムメーキングの学び直しも


「映画祭で大きなスクリーンで初めて見たときは、長かった製作期間の心配ごとから解き放たれて、ひとりの観客として作品に入り込みました。号泣したのは、三姉妹のつらい気持ちがひしひしと伝わってきたから。映画に描かれているような韓国の家庭の雰囲気や父親の態度などは、以前よりは変わってきている。でも、まだ家父長制文化が完全になくなったとは言えません。それは、韓国だけではないように思います。アジア、そして他の地域にも存在する問題ではないでしょうか」

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私生活では映画『1987、-ある闘いの真実』のチャン・ジュナン監督との結婚・出産を経て、「年を重ねて俳優としてのプライドが少し朽ちてきたので、プライドを取りもどすために勉強しようと思った」と大学院に進学。演出を学び短編映画を製作するなど、いまやフィルムメーカーとしての顔を持っています。

1999年に『ペパーミント・キャンディー』でデビューして以来、韓国映画界をけん引してきたムン・ソリさん。近年『はちどり』や『1982年生まれ、キム・ジヨン』など女性監督の活躍も目立つ韓国映画界ですが、中に身を置くムン・ソリさんの目には、どのように映っているのでしょうか。

 

「かつては映画の現場に行くと、メイクや衣装、美術担当に若い女性が数名いるだけでした。でも、いまは撮影チームにも女性がいるし、女性プロデューサーや監督も多いです。女性監督の先駆的存在であるイム・スルレさんも『以前は女性監督といえば、シンプルなファッションだったけど、今はおしゃれで、夫や姑についておしゃべりしたりする。隔世の感だ』と(笑)。ただ、大学で教えているのですが、映画科の学生の男女比率は半々であるにもかかわらず、映画産業に実際に就職するのは男性の方が圧倒的に多いんです」

30代、40代のリアルを等身大に描く『三姉妹』でムン・ソリさんは、青龍映画祭や韓国映画評論家協会賞で最優秀主演女優賞に輝きました。

「賞をいただけるのはとてもありがたいですが、映画を作ったのは賞をもらうためではありません。一番うれしかったのは、映画を観てすごく癒されたという方がたくさんいたこと。自分の母や家族を理解するきっかけになったという言葉が、わたしたちにとって一番の賞だと思っています」


10歳の一人娘の母でもあるムン・ソリさん。最後に、「娘さんが大きくなって『三姉妹』を見たらどんな話をしたいですか」と尋ねてみました。

「たくさん話してみたいことはありますが、ひとつ願うとすれば、映画のような出来事を経験せずに、『こんな人たち見たことがないんだけど。ありえないよね?』って言う時代がやってくること。そんなふうに祈っています」
 

<映画紹介>
『三姉妹』
6月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

 

監督・脚本 イ・スンウォン (長編第三作 )
製作: キム・サンス 、 ムン・ソリ 
音楽 パク・キホン(『大統領の理髪師』)
出演:ムン・ソリ(『オアシス』、『ペパーミント・キャンディー 』、『お嬢さん』)、
キム・ソニョン(「愛の不時着」、『マルモイ ことばあつめ』)、チャン・ユンジュ(『ベテラン』)、チョ・ハンチョル(「海街チャチャチャ」「ヴィンチェンツォ」)
2020年 /韓国 /韓国語
http://www.zaziefilms.com/threesisters/


構成/露木桃子
 

 
 
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