6カ国を渡り歩いた転校生の意外な素顔
6カ国の地元校を渡り歩いたナージャさんは、さぞかし積極的な性格だろうと想像してしまいますが、意外にも素顔の彼女はかなりの人見知り。実際、しゃべることを求められない日本の学校は彼女にとって過ごしやすかったそうです。一方、アメリカのように自己主張を大切にする国では、先生に「しゃべるまで、家に帰さない」と言われ、肩身の狭い思いをしたのだとか。
とはいえ、比較的おとなしい国民性の日本においても人見知りは欠点のように思われがち。しかしナージャさんは、人見知りは「短所」ではないと主張します。
「『人見知り』は短所ではなく立派な長所だ! なぜなら、人見知りは、いつもこんなふうにすごしているから。
1 客観的に人や状況を観察する。
2 しゃべる前にしゃべる内容としゃべり方を考える。
3 こう言ったらどんな反応があるかなあと予測もする。
4 返ってきた言葉を振り返って、次の発言を考える。
人見知りじゃない子どもの多くは、思いのまましゃべって、すぐに友だちもできる。だから、そこまで深く観察したり、どうすればいいかをあまり考えたりしないと聞いたことがある。新しい環境や言葉が通じない環境になればなるほどこの傾向は強いのかもしれないと思う」
いろいろ乗り越えられたのは「人見知り」のおかげ
後年、大人になったナージャさんは、識者の意見や研究結果を通して「人見知り」は、コミュニケーションの質を高める「能力」であることを確信し、このように自分の過去を振り返っています。
「それまで自分でも『人見知り』のおかげでいろいろ乗り越えられたとうすうす気づいてはいたけれど、この事実を知って『あー、やっぱり!!』と完全に救われた気分になった。もっともっとたくさんの人が自分や人の『人見知り』のいいところを引き出して、もっともっとポジティブに使ったり捉えるようになったら、世界はかなり変わると思う」
キリーロバ・ナージャ(Nadya Kirillova)さん:クリエーティブ・ディレクター/コピーライター/絵本作家。ソ連・レニングラード(当時)生まれ。数学者の父と物理学者の母の転勤とともに6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)それぞれの地元校で多様な教育を受けた。広告代理店入社後、様々な広告を企画、世界の広告賞を総ナメにし、2015年の世界コピーライターランキング1位に。国内外の広告やデザインアワードの審査員歴を持つ。「電通アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」メンバー。著書に『ナージャの5つのがっこう』(大日本図書)、『からあげビーチ』『ヒミツのひだりききクラブ』(共に文響社)がある。
『6カ国転校生 ナージャの発見』
著者:キリーロバ・ナージャ 集英社インターナショナル 2420円(税込)
両親の転勤で世界6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)に転校。各国の地元校で教育を受けた著者が、それぞれの国での体験を切り口に、「当たり前」「ふつう」「常識」を問い直します。海外の教育は先進的で日本の教育は遅れている、という先入観を持つ人には目から鱗の真実が満載。体験者ならではの視点で、根拠のない優越感および劣等感を打ち砕いていく痛快な一冊です。
構成/さくま健太
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