――苦しんだ時期を乗り越える上で支えになったものは何だったんでしょうか。

やっぱりスケート仲間です。正直、当時はシーズンが終わるまでマイナスの状態から抜け出せなくて。いつもなら僕は陸上より氷の上にいる方が自信が持てるのに、そのときは氷の上で全然自信が持てなくて。むしろ普段は楽しく過ごしているのに、リンクに行くと気持ちが落ちてしまうという状態だったんです。

そこからオフに入って。満知子先生のもとに行くまでの半年間、チームが定まらない時期を過ごして。悶々としている中、中京(大学)のメンバーだったり、アイスショーや合宿で会うスケート仲間といるときだけは楽しい時間を過ごせた。

スケート仲間って、普段一緒に練習をしていなくても、顔を合わせるとみんな仲が良くて。一緒にいるだけで心が落ち着くんです。僕にとって共に競技の世界で戦っている選手のみんなは、同志に近い存在なのかなと思います。

――試合ではライバルなはずなのに、みんなそれぞれがベストな演技ができることを本気で願っている。そういった選手同士の強い絆がフィギュアスケートの魅力のひとつだなと感じています。

フィギュアって個人競技ではあるので、ひとりでやっていこうと思えばやっていけちゃうんですよ。僕自身、そんな考えのときもありました。でもこうして自分がどん底まで落ちたときに、どれだけ周りの支えが大切かに気づけた。本当にいい仲間たちばかりだなと思います。

スケート靴のエッジをぐっと倒したこのディープエッジこそが、名スケーターの証の一つ 写真:森田直樹/アフロスポーツ

――苦難のシーズンを経て、改めて思ったことはありますか。

自分を追い込みすぎないこと、ですね。フィギュアスケートってショートとフリーを揃えるのが本当に難しくて。僕の場合だと、両方パーフェクトの試合って1シーズンに1回あるかないかというレベル。一時期は、毎試合絶対にノーミスでいきたいと追い込んでいたこともありますが、それも難しいということがわかってきたので。今はとにかく試合ごとに自分のベストが出せれば、たとえミスがあったとしても次につなげられるという考えになってきました。

 

それよりももっと大事なことは、スケートをやりたいからやっているんだっていう気持ちを忘れないことなのかなって。試合に出る以上、悔しい想いをすることはある。でもどんなときも、スケートを好きだという気持ちを何より大事にしようって、やっと考えられるようになりましたね。

今まで以上に応援の力を強く感じるようになった


――このオフシーズンの活動では、「スケーターズコレクション」への出演やスポーツギフティングサービス「Unlim」でクローズドコミュニティを開設されたことが印象的でした。どれも、次の五輪に向けての4年間、競技を継続していくための取り組みだと感じていますが、いかがですか。

正直なことを言うと、僕の今の立場がすごく金銭的にも負担がかかるといいますか。海外の試合に出るとなると、滞在費や渡航費といったお金がどうしてもかかる。でも、僕は今、グランプリシリーズに呼んでいただいても、なかなか賞金をいただける順位になれていないので、厳しいところは正直あります。

――フィギュアスケートはお金がかかる競技として有名ですもんね。

そこをなんとかするためにも、やっぱり結果が大事。結果を出せば賞金もそうですし、アイスショーに呼んでいただく機会も増えるので、競技の資金も得られる。なんとか一歩先に進むためにも、この壁を突破したいなという気持ちは強いです。

今はそのためにみなさんのお力を借りている段階で。本当にありがたいですし、こうして支えてもらうことで、今まで以上に応援の力を強く感じるようになりました。だからこそ、この感謝の気持ちを自分の成長に変えていきたい。自分がもっともっと成長していくことで、いつかそういった取り組みをしなくても競技を続けられる位置に行きたいし、そうなることが今応援してくださっている方たちへのいちばんの恩返しなのかなと思っています。