原因は「責任意識のなさ」
世代交代が進んで、「お茶」と妻に言って座ったまま待つ夫や、自分の下着がどこにしまってあるかわからない男性は減ったと思います。町でベビーカーを押す男性や、スーパーで買い物する男性を見かけることも珍しくなくなりました。それでも、2020年のNHKの生活時間調査を見ると、夫たちの家事・育児時間はとても少ない。女性の平日の家事時間は4時間34分で、男性は1時間9分。1時間を超えたのは時代の変化と言えますが、仕事を持ち6~8時間働く男性に限ると、38分しかありません。まだまだ女性の負担の方が大きいのです。
男性の中には、家事は妻の領域だと思っている人もたくさんいます。なかなか家事をシェアしようとしない人は、もしかするとその思い込みが強いのかもしれません。育児についても、子どもと遊ぶ父親は多いけれど、子どもの世話をする父親は少ないと言われています。そうした消極性はもしかすると、そもそも家庭を回すのは自分の役割ではない、と思っていることから来ているかもしれません。
そうした男性は、例えるならば自分を「羊飼い」、妻や子どもを「羊」とみなし、自分を家族とどこかで切り離しているのではないでしょうか。自分は家計を背負っていて、家族を養う責任がある。妻が仕事を持っていても、家を買うなど大きな買い物を決断するのは自分で、何かあったときに家族を守るのも自分だ、という大黒柱としての責任感がある人です。
しかし一方で彼は、だからこそ家事や育児の責任も、子どもの問題を解決したり家計をやりくりする責任も妻にあると考えています。妻も忙しいから家事を手伝い子どもの相手もするけれど、心のどこかで自分のテリトリーではない、と思っているのです。だから、「ちゃんと片づけてよ」と妻が言っても生返事しかせず、ゴミ捨てはしても家じゅうのゴミを集めてくることまではしないのかもしれません。名前のない家事がまったく見えていないわけではなく、そこまでは自分の仕事ではないから責任を感じていない、という場合があるのです。
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