夫の家事時間を減らす「社会のシステム」


家計を背負うのは夫で、家のことの責任者は妻、という考え方を「性別役割分担」と言います。その価値観は、昭和半ばの高度経済成長期に広がり、多くの家庭で夫は安定した職業のサラリーマンになり、妻は主婦業中心で暮らす、というライフスタイルに帰着しました。そのライフスタイルを標準として、年金をはじめ国の社会保障制度や、企業の雇用形態が決まってしまった。その制度は今も継続していて、シングルの女性やシングルマザーに育てられる子どもが貧困に陥りやすい要因となっています。

 

家事の大半を担う妻がラクになるためには、夫たちに、名前のない家事というものがあって、その負担の大きさを訴えることが必要です。少なくとも、モノを元の場所に戻すなど夫が自分のことを自分で処理するだけで、妻の家事を減らすことができます。夫にも当事者意識、さらにはもっと家事に関心を持ってもらう努力は必要ですが、実はその背後にある大きな社会のシステムが、夫の家事を減らしているかもしれないのです。9月29日に発売した新刊『家事は大変って気づきましたか?』(亜紀書房)では、そうした家事のさまざまな問題を考え、歴史を探り、家事を大変にする社会のしくみを明らかにしました。家事について悩んでいる女性の心の負担を、少しでも軽くできればと思っています。

風邪で寝込む妻に「俺は外で食べてくるから」...自称“理解がある夫”がわかっていない家事の話_img0

<新刊紹介>
『家事は大変って気づきましたか?』

阿古真理 亜紀書房
¥1980

──時代が変わっても、家事はラクになっていない!

なぜ家事は女性の仕事だったのか?
明治から令和まで、家事と仕事の両立を目指してきた女性たちの歴史、それぞれの時代の暮らしと流行を豊富な資料で解き明かし、家事に対する人々の意識の変遷を読みとく。

●メディアが広げた“幸せな”性別役割分担
●「本当は自分でやるべき」に縛られる
●育児をレジャー化する「名ばかりイクメン問題」
●令和の食卓における効率化と趣味化
●一汁一菜ブームが見落とすもの……etc.


【著者プロフィール】
阿古真理(あこ・まり):
作家・生活史研究家
1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学卒業。作家・生活史研究家。食や暮らし、女性の生き方などをテーマに執筆。主な著書に『小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代』『料理は女の義務ですか』(新潮新書)、『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた。』(幻冬舎)、『日本外食全史』(亜紀書房)、『ラクしておいしい令和のごはん革命』(主婦の友社)など。最新刊は『家事は大変って気づきましたか?』(亜紀書房)。


画像/iStock、Shutterstock
 

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