あるときは、天使のように指先やつま先まで美しくしなやかに。またあるときは、炎のようなオーラをまといながら激しく、力強く。バレエ、ポッピン、そしてヒップホップダンスなど幅広いジャンルのダンスをこなし、米ビルボード誌が「モダンダンス・キング」と称賛したBTSメンバーJIMIN。
彼のダンスの原点のひとつが、故郷の韓国・釜山のダンススクール「JUST DANCE ACADEMY」です。中学生の時にこのスクールに通い始めたのが人生の転機となったことは、ファンの間でも広く知られています。
「これまでメディアからインタビューの依頼はたくさんあったけど、すべて断ってきた」というJUST DANCE ACADEMYのキム・ギユン院長。
10月15日に釜山で開催されるBTSのコンサート『WORLD EXPO 2030 BUSAN KOREA CONCERT BTS <Yet To Come> in BUSAN』を目前に、ふるさとの街で大きなステージに立つJIMINについて、キム・ギユン院長が独占インタビューで初めて明かしました。
誰もいないなか、JIMINだけが練習していることもよくありました
――JIMINさんとの出会いについて教えてください。
キム・ギユン院長(以下キム):初めて会ったのは、JIMINが中学1年生の時。彼が通っていた中学校の課外授業で、週に1、2回ポッピンのクラスを担当していたんです。ダンスに関心がある男子生徒が12人ぐらい受講していて、JIMINもその一人でした。
すごく上手で驚きました。ウェーブを教えても、ポッピンを教えても、JIMINだけ毎回とびぬけて上達するんです。そんな姿に惹かれ、「ダンスを本格的にやってみないか?」と声をかけ、JUST DANCE ACADEMYに誘ったんです。JIMINは、レッスンの時にいつも自ら進んで一番前に立ち、講師の正面でレッスンを受けていました。
――具体的に、JIMINさんのどんな点がほかの生徒と違ったのでしょうか。
キム:明らかに違いました。このスクールはいま12年目で、数千人の生徒とかかわりましたが、JIMINのような生徒は見たことありません。生まれつき持っていたのは、あふれるパワーと、それを持続させるエネルギー。それらは、ポジティブな性格と人生にたいする真摯な気持ちから生まれていたのだと思います。
JIMINが特別なのは、ひとつのダンスの動きを教えると、完璧にできるまで練習すること。ふつうはあきらめたり、悩んだりするものですが、彼はひたすらトライする。潜在力がありました。教えられたことをできるまで、粘り強く繰り返すスタイル。自分を信じて、挑戦する過程を楽しみ、いつも笑顔だったのを覚えています。他の先生たちも、「JIMINはダンスに向いている」と言っていましたね。
学ぶペースが速いというよりも、どうやったらできるのか理解する力があるタイプです。高校1年生の時に現代舞踊のレッスンでターンの練習をしていた時、うまくできなかったんです。でも、ずっとトライしていました。できるまで。
――何時間ぐらい?
キム:限りなく。ときには夜中の2時、3時まで。高校生は学校のテストが終わると羽を伸ばして遊んだりしますが、JIMINは「釜山芸術高校の授業では学べないストリートダンスの練習をもっとやりたい」と、スクールに来るんです。日曜日もよく一人でここに来て、練習していましたね。自分がやりたいと思ったら、あたりまえのように実行する。スクールのドアは24時間開いていたので、誰もいないなかJIMINだけが練習していることもよくありました。
教えるとスポンジのように吸収するんです。「天才は本当に存在するんだ」と思いましたね。
ただ、苦労せずに習得できるタイプの人もいますが、JIMINはそうじゃない。最初から講師に言われた通りに踊り、センスがある子を僕は「英才」と呼んでいるのですが、「英才」はいっぱいいるんです。でも、JIMINは「英才」ではない、「努力型の天才」でした。無理やりつらい思いをしながら頑張るのではなく、自然にポジティブに努力するんです。彼の才能は、練習の量と努力に裏打ちされたもの。だから、ある程度時間がたつと、どんどん伸びてきます。「英才」は、最初は上達しますが、壁にぶつかり成長が止まる。でも、JIMINは、はじめはゆっくりですが、途中からぐんぐん伸びていきました。
そんなJIMINの周りには、いつも先生たちが集まっていました。なにか教えたくなる雰囲気があるんです。勉強もよくできたし、先生に愛されるタイプでしたね。なぜなら、教えたことをしっかり復習して自分のものにするから。疑問を持ったり、ためらったりする姿は見たことありません。学ぶ姿勢が、すごくポジティブなんです。思春期の中学生なのに……不思議でした。一緒にいると、まわりもポジティブになる。そういうケースは稀なんです。
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