書き上げた3作目の長編で江戸川乱歩賞受賞


――初めての本が発売されて約2ヵ月が経ちました。

荒木あかねさん(以下、荒木):そうですね。発売日には実際に書店に足を運んで、自分の本がずっと憧れていたミステリー作家さんの隣に置かれているのを見たんです。名前が並んでる! って感激しながら、本当に本を出してもらったんだなぁと、しみじみして。

――趣味として小説を書くのではなく、職業として作家になりたいという気持ちは、いつ頃から、あったのでしょう?

荒木:中学3年生のときに、有栖川有栖さんの日常の謎を取り扱った短編を読んだのが大きなきっかけでした。もともと幼い頃からは本は読んでいたんですけど、こんなに面白い小説があったんだ! という大きな衝撃を受けた勢いで、躊躇なくその夏に小説を書き始めてからずっと小説家になりたい気持ちはありました。

 

でも、もちろんそんなに簡単にはいかず、中・高生の頃は長編を書き上げる力もなくて、ただノートにちょろちょろっと書いていただけで。ようやく長編を完成させられるようになったのは大学生になってから。そこから新人賞に応募するようになりました。とはいえ、乱歩賞ではない賞に送った最初の2作は、書けたからとりあえず出してみただけ。自分でも全然ダメダメだとわかっていました。社会人1年目に書いた今回の受賞作は3作目の長編で、やっと手応えのあるものに仕上がった作品でした。

 

家族のなかで小説を読むのは私だけ


――こういってはなんですが、「読書」は荒木さん世代の方たちにとって、もはやメジャーな趣味ではないですよね。小さな頃から読書好きだった理由は、御両親や周辺環境など、なにか要因があったのでしょうか。

荒木:それが、うちの家族は私以外まったく本を読まないんですよ(笑)。ただ、母が自分は読まないけど私には躊躇いなく本を買ってくれる人で。オモチャなんかは注意されても、本だけは一度もダメって言われた記憶がないんです。本って結構高いのに、それが子ども心に嬉しかったし、私が本を読むことが母も嬉しかったんだと思います。

――では、ご家族は『此の世の果ての殺人』も読まれていない?

荒木:母だけは読んでくれました。面白いと言ってはくれたんですけど、小説に出てくる母親については“私のこと書いてるわけじゃないよね?”って笑ってましたね(笑)。