魅力的な女性が登場するミステリーを描いていきたい


――スタートラインに立って走りはじめた作家道ですが、こんな物語を書いていきたいといった展望を聞かせて頂けますか?

荒木:そうですね、学生時代は有栖川さんの影響もあって、ガチガチの本格ミステリーを書きたい想いが強かったんですが、トリックや謎やどんでん返しといった要素が、自分ではあまり上手く作れない感覚があったんです。もちろん、今でも魅力的な謎を書きたい気持ちは変わらずに持っていますが、少しずつ、現実でも物語でも社会性や多様性といったものについても考えるようになってきて。そうした物事とちゃんと向き合いつつ、キャラクターやストーリーの流れを考えるのが楽しくなってきたところです。

 

――多様性もですが、『此の世の果ての殺人』は、登場人物の関係性も絶妙で、印象に残る台詞や場面が多々ありました。たとえば「友だち、三人しかいなかったのにみんな死んじゃったんです」と言ったハルにイサガワ先生が「三人もいれば充分じゃない」と笑う場面のように、さらっといいな、と思える描写は荒木さんの大きな魅力だと感じます。

荒木:ありがとうございます。自分もハルと同じで決して友だちは多くないのですが、すごく恵まれていて、いつも支えてもらっています。私が女性同士の連帯を描きたいと思ったのも、そうした友だちがいたから。

今、第2作のプロットを考えているところですが、やはりバディもので、共感できても、できなくても、それぞれに魅力的な女性がたくさん出てくるミステリーを描きたいという気持ちが強くあります。ええと、そうですね、来年の6月ぐらいには……出して頂けるように頑張ります(笑)。

 

<書籍紹介>
『此の世の果ての殺人』

著:荒木 あかね 講談社

第68回江戸川乱歩賞受賞作。

史上最年少、選考委員満場一致。
「大新人時代」の超本命!

本格ミステリーの骨法もよく心得ている――綾辻行人
特A、もしくはA+、もしくはAA――月村了衛
二人の女性のバディ感が最高に楽しい――柴田よしき
極限状況で生きてゆくひとが、愛しくなる――新井素子
非日常を日常に落とし込む、その手捌きは実に秀逸である――京極夏彦

―滅びゆく世界に残された、彼女の歪んだ正義と私の希望
正義の消えた街で、悪意の暴走が始まったー

小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。


撮影/森清
取材・文/藤田香織