「北風と太陽」という寓話のことは、みなさんきっとご存じですよね。

旅人のコートをどちらが早く脱がすことができるか、北風と太陽が勝負をします。北風は冷たい風を吹きつけてコートを吹き飛ばそうとしますが、旅人は寒さから身を守るためにコートを体にしっかり巻きつけてしまう。しかし太陽が暖かい陽射しを降りそそぐと、「暑い暑い」とコートを脱ぎ捨て、勝負は太陽の勝ち。

「働き方を変える」ときにも、同じようなことが言えるのではないかと思います。

「このままじゃダメだよ」「遅れてるのはあなただけだよ」そんな風にせっつかれ、脅されて、人は変わることができるでしょうか。反発や恐怖を覚えるだけで、変化ときちんと向き合えるのか疑問です。

変化を「より豊かになること」だと前向きにとらえようという、太陽のような本が刊行されました。


働き方の変化の前提は、「ウェルビーイング」


新しい働き方のテーマは、「ウェルビーイング」(=人間的な豊かさ)だと語るのは、『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』シリーズで有名な経営学者・リンダ・グラットン。彼女の最新作が、『リデザイン・ワーク 新しい働き方』です。

『リデザイン・ワーク 新しい働き方』(リンダ・グラットン著、池村千秋訳/東洋経済新報社)


問われているのは、昔の働き方に再び戻るのか、それともこれをきっかけに仕事のあり方を根本から設計し直し、すべての人がやり甲斐と生産性と充実感を高められるようにするのかという点だ。
-『リデザイン・ワーク 新しい働き方』より

 


テクノロジーの進化やコロナ渦により、人々の働き方は大きな変化のときを迎えています。その変化の大前提となるのが「ウェルビーイング」。「人間的に豊かに生きられるか?」がすべてに通じるキーワードです。

豊かさとは、「しがらみからの解放」です。これまで私たちを縛ってきた、通勤・9時5時の勤務時間・ハンコや書類を重宝する文化。これらは、私たちから時間と心の余裕を奪ってきました。一方的に押し付けられる「働き方」から逆算して人生設計をし、ちょっとでもわき道にそれたら排除されるのではないかと怯え……。

そんな重く冷たい鎖から解放されましょう。そして、長く健康を保ち、バランスの取れた家庭生活を維持し、好奇心に従って新しい挑戦をする。これらを叶えるために大切なことを、本書から二つご紹介します。

 
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