カメラの前で泣く意味、イチャつく意味
ちなみに今回のNetflixの「ハリー&メーガン」では、2人がどんなに愛し合っているかを映像として見せられることになりました。人前でいちゃつくのも、一般的には恋愛初期に分泌される恋愛ホルモンの影響で、熱にうかされ視野が狭くなり、自分たちのことしか見えなくなるからで、「ベタベタする姿を衆目にさらす夫婦ほど破局する」という見方まであるのは、もともと世の中が見えなくなるタイプだから。でも、カメラの前でイチャつくのはやはり演出含みの自己顕示欲に見えてしまうし、王族は愛のない結婚をしがちだけれど、私たちには真実の愛があると暗にアピールしているよう。
そして何より、カメラの前でメーガン妃が何度も泣いたこと。そこにも違和感を覚えた人は少なくないはず。泣いちゃあおしまい、泣くのはズルい、これもまた自己を顕示する演出に見えるから、というわけです。
いずれにせよプライバシーを守るために離脱したはずが、プライベートの映像をドンドコ流すのは矛盾があるし、彼らは一体何がしたいのでしょう。
上昇志向の心理からすれば、それ以上ないほどの地位にまで上り詰め、行き場を失った上昇志向は、そうした立場にあっても、さらに自分が人として1番正しく1番立派、それを世の中に知らしめたくなったということなのでしょうか。
本来が上昇志向など持たないはずのヘンリー王子が『SPARE(スペア)』という本を出版するに至ったのも、運命的に2番手であることへの不満からですが、これも妻の価値観が影響したものなのでしょう。
繰り返しになるけれど、上昇志向自体はいけない感情では無いはずです。誰もが持っていなかったら世の中まわっていかない。でも上昇志向が強すぎる人は時に手段を選ばなくなります。そのために他者を批判したり、自分の置かれた環境を否定したり。本来ポジティブな感情である上昇志向が、何かにつけてネガティブに働いてしまう、そういう上昇志向はあってはいけないと思うのです。
少なくとも上昇志向の物語として、こんなサクセスストーリーは他にないし、こんなシンデレラも他にいないのですから。
構成/藤本容子
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