以前と比べて、日本の職場における服装はかなり自由になりましたが、自由になった分、服装をめぐるトラブルも増えているようです。職場における服装というのは、どの程度、規定されるべきものなのでしょうか。

「オフィスカジュアル」が浸透する日本で、服装を巡るトラブルが絶えないワケ。背景にある“特殊な雇用制度”とは_img0
イラスト:Shutterstock

かつての日本では、男性はスーツ、女性は制服という企業も多く、それなりの規定があったと考えてよいでしょう。同様に、髪型やアクセサリーなどについても、細かい規定を設ける企業も少なくありませんでした。

近年、働き方の多様化が進み、制服を廃止する企業が増えると同時に、私服についてもかなりの自由度が認められるようになっています。しかしながら、顧客対応が必要な業種を中心に、やはり一定の規律が必要との声があるのも事実です。

 

一部の職場では、身だしなみについて裁判になったケースもあります。以前、郵便局において、長髪で髭を生やしていた職員に対してマイナスの人事評価を行ったことが裁判となり、職員側が勝訴するという出来事がありました。

当時の郵便局には、服装規定があったそうですが、裁判所では服装や髪型については基本的に従業員の自由であり、ヒゲや長髪などを一律不可とするのは認められないとの判断を示しています。

服装や髪型について個人の自由であるという原理原則は多くの人が理解していることであり、この考え方自体を否定する人は少ないと思います。しかしながら、仕事にはそれぞれふさわしい服装があると考える人も多く、どこまで自由を認めるべきなのかについては、明確な基準がないようにも思えます。

欧米各国では、日本よりもはるかに従業員の権利が保護されており、社会一般の認識としても服装は自由という考え方が徹底しています。では、こうした欧米企業において、服装に関する規定がないのかと言うと、そんなことはありません。職種によっては、むしろ日本よりも厳しいドレスコードが制定されていることもあります。

では、なぜ自由が貫徹している欧米諸外国において、日本より厳しいドレスコードが容認されているのでしょうか。実は、この問題は各国の雇用制度と密接に関係しています。

 
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