国会で発言する丸川珠代議員(写真は2021年当時)。写真:つのだよしお/アフロ

自民党の丸川珠代議員が13年前の国会で、当時の民主党が導入した所得制限なしの子ども手当法案に対して「この愚か者めが」と繰り返し絶叫したことが取り上げられ、批判されています。以前もこのコラムで政治家の言葉の劣化について取り上げましたが、今回のケースもまさにその典型例だと思います。

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丸川氏は2010年3月の参院厚生労働委員会で、当時の民主党が提出した所得制限なしの子ども手当法が採決された際、「愚か者めが」「このくだらん選択をしたばか者ども絶対に忘れん」などと激しいヤジを飛ばしていました。13年の時が過ぎ、自民党は、かつて自身が激しく批判していた所得制限なしの手当を検討しており、その矛盾が指摘される中で、当該発言が再度、注目されたわけです。

状況が変われば政策が変わるのは当然のことであり、かつて反対していたとはいえ、所得制限なしの手当を検討すること自体は悪いことではありません。しかしながら、丸川氏のヤジは、どうひいき目に見ても常軌を逸しており、13年前のこととはいえ、批判されても仕方のないことだと思います。

元宮崎県知事でタレントの東国原英夫氏は、自身のツイッターで丸川氏のヤジに関して「あれは本性なのか? 自己演出なのか?」とつぶやいていました。ごく普通の生活を送っている私たち一般人からすれば、あの絶叫は完全に「ドン引き」してしまうレベルといってよいでしょう。


一連の批判を受けて岸田文雄首相は、「節度をこえていたとのご指摘は謙虚に受け止め、反省すべきは反省しなければならない」と陳謝しました。謝罪する際に「反省すべきは」などと前置きを付ける言い方は、「一部分では悪いところもあったが、全体としては自分は正しい」というニュアンスになり、本来、謝罪のあり方としては最悪のパターンです。

岸田氏としては、丸川氏のヤジは自分とは関係ないとの思いがあるでしょうから、こうした発言になったものと思われます。あくまで自民党という組織のトップとして、自身が率いる党の党員が行った行為について謝罪しているわけですから、こうした言い方もある程度までは社会に受け入れられるかもしれません。

しかし、この問題の当事者である丸川氏はそうはいかないはずです。

それにもかかわらず、丸川氏は発言について記者団から問われ、「反省すべきは反省したい」と岸田氏とまったく同じ言い回しで自身の発言について説明するにとどまりました。丸川氏は当事者であるにもかかわらず、前提条件付きでしか謝罪しない、というスタンスを明確にしたわけですから、案の定、ネットでは「謝罪になっていない」との声が飛び交っています。